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ビジネスを行う上で、売上や集客、在庫などの予測は欠かせない業務の1つではないでしょうか。
ただ、どれだけ過去のデータを利用しても、正確に未来を予測することは困難ですよね。
ときには、ベテラン担当者の経験と勘を組み合わせることで、高い精度で未来を予測できることがあるかもしれません。
しかし、1人に頼った意思決定には限界があります。
また、需要予測のズレによる機会損失や過剰在庫のリスク、さらには予測プロセスの属人化による業務のブラックボックス化は、多くの企業が抱える深刻な課題だと思います。
そこで本記事では、こうした課題を解決するために生成AIに搭載されているDeep Research機能を使って未来予測をしてみた内容についてご紹介します!
この記事を読み終える頃には、あなたのビジネスでAIによる未来予測の結果を活用する具体的なイメージが湧いているはずです。
✍️AIで未来予測ができる「Deep Research」とは?
Deep Researchは、専門的な知識がなくてもAIによる大量のデータをリサーチできる機能です。
まずは、Deep Researchと未来予測の関係を簡単にご紹介します。
本記事の想定読者
Deep Researchとは?強みと弱み
Deep Researchとは、GeminiやChatGPTなどに搭載されている機能で、自律型AIエージェントと言われます。
これまでの生成AIは、自身に与えられた情報をもとに結果を返す仕組みが一般的でした。
一方のDeep Research機能は、ユーザーの質問に対して、どのようなプロセスで回答するかを自ら考えます。
そして、思考したプロセスに沿って、リアルタイムで更新される情報や与えられた内部データなど、ときには数100件ものデータを調査・分析し、まとめた結果をユーザーに返します。
このように人間のように自ら考えて行動できるため、Deep Researchは自律型AIエージェントと言われています。
ただし、Deep Researchは万能ではありません。
その特性を理解し、適切に活用することが重要です。
【強み】
AIでできる未来予測とポイント
Deep Researchで未来予測を行う場合、様々な使い方があります。
利用できるビジネスシーンと利用時のポイントを知っておくことで、より一層Deep Research機能を活用できるはずです。
【Deep Researchを利用できるビジネスシーンの例】
上記をはじめ、様々なシーンでDeep Researchによる未来予測を利用できます。
【Deep Researchを利用するときのポイント】
こうしたポイントを抑えることで、未来予測にDeep Researchをさらに活かせるはずです。
🤔生成AIのDeep Researchを使って未来予測をしてみた!
それでは、生成AIのDeep Research機能を使って、実際に未来予測をしていきます。検証条件
検証には、以下の生成AIを利用します。
Gemini 通常調査
Gemini Deep Research
※Geminiのプラン/モデル/Gemini Deep Researchについて
ChatGPT Deep Research
※ChatGPTのプランとモデル/Deep Research利用時のモデルについて
Microsoft Copilot Deep Research
※Microsoft Copilotのプラン/機能/Microsoft Copilot Deep Researchについ検証内容とポイント
検証するアウトプット:過去のデータと市場の状況をもとに、今後1年のウェブ広告のコンバージョン予測
検証内容1:Geminiによる通常調査とDeep Researchの出力結果を比較
検証内容2:Gemini、ChatGPT、Microsoft CopilotのDeep Researchの出力結果を比較
検証項目
※Holdout法:過去データをトレーニンググループとテストグループに分けて、トレーニンググループをもとに予測したデータとテストグループの結果を比較する手法
(今回は過去3年分のデータを用意し、直近1年分をテストデータとします)
※Mean Absolute Error (MAE):実際の値と予測値の絶対誤差の平均。値が小さいほど予測精度が高い。
(今回テストデータとする直近1年分のデータを実測値とし、AIは1年前の状態から2年後までの未来予測を行う)
(計算例:ある月のPV数の予測値が1,050、実測値が1,000の場合は、差分の絶対値が|実測値-予測値|=50になる。この計算を全月で行い平均値をとる)
検証手順
ここから、実際に検証した手順をご紹介します。
Gemini 通常調査
1.Geminiのアカウントにログイン
右上の「ログイン」をクリックし、任意のアカウントでログインをします。
2.モデルの設定
今回は、「2.5 Flash」を選択しました。
3.データファイルを添付
「+」マークからファイルを添付します。
今回は以下のシートのうち、直近1年のデータを除いたファイル(2024年9月以前のデータ)を作成し、添付しました。
以下のプロンプトを入力して調査を開始します。
【プロンプト】
「含めるべき項目」
「出力のポイント」
Gemini Deep Research
1.モデルの設定
Geminiにログイン後、Deep Researchを行うモデルを入力欄のプルダウンから選択します。
2025年10月時点、無料プランでDeep Researchを利用できるモデルは「2.5 Flash」のみです。
有料プランに切り替えると、「2.5 Pro」モデルでもDeep Researchを利用できます。
2.Deep Researchを選択
入力欄の「ツール」から「Deep Research」を選択します。
3.データファイルを添付
先ほどと同様にファイルを添付します。
Deep Researchでは、検索ソースも選択できます。
今回はGoogle検索のみ選択していますが、利用状況にあわせてGmail、ドライブ、チャットを設定してみてください。
4.プロンプトを入力して調査開始
プロンプトを送信すると、以下の画面が表示されるので、「リサーチを開始」をクリックします。
もし、調査のプロセスを変更する場合は、「計画を編集」を選択してください。
現状のプロセスが表示されるため、変更内容を指示してからリサーチを開始できます。
ChatGPT Deep Research
1.ChatGPTアカウントにログイン
2.ChatGPTのモデルを選択
無料プランはモデルを変更できないため、そのまま進めます。
無料プランでDeep Researchを行う場合は、旧モデルを使った軽量バージョンでの実行になります。
3.Deep Research機能を選択
入力欄の「+」マークから「Deep Research」を選択します。
4.データファイルを添付
「写真とファイルを追加」から同じデータを添付します。
5.プロンプトを入力して調査開始
同じプロンプトを入力して調査開始です。
開始すると質問が返ってきたため、以下のように指示を追加して調査を開始しました。
ChatGPTでは、このようにユーザーの意図を理解するために、質問が返ってくることがあります。
Microsoft Copilot Deep Research
1.Microsoftアカウントにログイン
2.Deep Research機能を選択
「+」マークからDeep Research機能を選択します。
3.データファイルを添付
同様に「+」マークをクリックし、「画像またはファイルを追加」からデータシートを添付します。
Microsoft Copilotでも、一部のGoogleアプリとの連携が可能です。
※Google スプレッドシートをMicrosoft Excelに変換して添付しています。
4.プロンプトを設定して開始します。
プロンプトを送信すると、以下の画面が表示されるので、「リサーチを開始する」をクリックします。
✅検証内容1:Geminiによる通常調査とDeep Researchの出力結果を比較
Geminiの通常調査とDeep Research機能の出力結果は、以下のようになりました。
※出力結果が長いため、一部を抜粋して掲載します。
【Gemini 通常調査】
【Gemini Deep Research】
検証結果
Geminiの通常調査とDeep Research機能の出力を「作成スピード」「情報の信頼性」「正確性」の3点で比較すると以下のようになります。
作成スピード
Deep Researchは、網羅的な調査を行い、見やすいレポートにまとめるため時間がかかります。
その特徴が反映された結果となりました。
作成時間のみを比較すればDeep Researchにメリットは感じられませんが、通常の調査で同様のレポートを作成するとなると、より多くの時間がかかるはず。
チャットを何度も繰り返し、ドキュメントに結果をまとめることを考えれば、むしろ3分40秒という時間はかなり速いです。
未来予測の結果をまとめて誰かに配布するシーンでは、大いに役立つはずです情報の信頼性
Deep Researchは、ときには100件を超えるリンクの調査ができる機能です。
しかし、今回の結果では、むしろ通常調査の方が多くの資料を参照しており、参照情報の鮮度にも大きな差はありませんでした。
この結果には、プロンプトでの指示が曖昧だったことが影響していそうです。
AIも人と同じで、具体的でわかりやすい指示の方が、依頼者が求める結果に近いアウトプットが可能になります。
もしDeep Researchで未来予測を行うときに、AIに参照してほしいリンクが決まっているときは、プロンプトに組み込むことをおすすめします。
正確性
Geminiの通常調査で出力されたのは、1年で1つの月の予測値だけでした。
一方のDeep Researchは、出力は四半期ごとの予測値のみで、クリック数とクリック率はありませんでした。
この結果にも指示が曖昧だったことが影響しているかもしれません。
サンプル数が少なくなったことで精度は落ちますが、PV数・コンバージョン数・コンバージョン率のいずれもDeep Researchの結果の方が誤差が小さい値となるため、より正確な値と言えます。
また、予測結果の出力数は、Deep Researchの方が多く出力しているため、通常調査の方が処理性能は低いと考えられます。
これらの点から、AIを使って未来予測を行うならDeep Researchの利用をおすすめします。
✅検証内容2:Gemini、ChatGPT、Microsoft CopilotのDeep Researchの出力結果を比較
ChatGPTとMicrosoft CopilotでもDeep Research機能を使い、同じプロンプトで未来予測を行った結果、以下のようになりました。
【ChatGPT Deep Research】
【Microsoft Copilot Deep Research】
検証結果
3つの生成AIのDeep Research機能を「作成スピード」「情報の信頼性」「正確性」の3点で比較すると以下のようになります。
Gemini:処理は速いがプロンプトの工夫が必要
Geminiは、他のAIに比べて圧倒的なスピードで未来予測を完了しました。
出力結果は求めるデータからは遠いですが、プロンプトを工夫することで改善の余地はあります。
AIになじみがない方にはハードルが高くなりますが、日頃からAIを頻繁に利用しており、プロンプトの調整ができる方は、Geminiを使った未来予測がおすすめです。
ChatGPT:未来予測の精度は高いが参照資料が少ない
データの精度が最も高いのがChatGPTです。
すべての項目で誤差が1番小さい値を示していました。
また、求める形式で全項目の毎月の予測値がアウトプットされていたのもChatGPTだけ。
AIに詳しくない方や予測精度を重視する方には、ChatGPTがおすすめです。
ただし、予測の根拠となるリンク数はGeminiと同様に少ないので、参照してほしいリンクが決まっているときは、プロンプトに組み込む工夫が必要です。
Microsoft Copilot:参照情報は豊富だが時間がかかる
Microsoft Copilotは、調べたリンク数が1番多く、他の生成AIの5倍以上でした。
予測値の根拠を固める資料を探している場合には、優秀なパートナーになるはずです。
ただし、調査には時間がかかるため、未来予測の結果がすぐに欲しいときは注意が必要です。
またMicrosoft Copilotは、多くの資料をリサーチすることは得意ですが、その結果を予測値に反映させる精度は高いと言えません。
そのため、予測の根拠となるデータ収集を目的として使うことをおすすめします。
🖊️検証結果まとめ
生成AIによる通常とDeep Researchを比較すると、以下のようになりました。
1回のチャットの返答時間は、通常調査の方が速いですが、調査結果をまとめるまでを考えれば、Deep Researchの方が効率的です。
また、予測データの裏付けとなる資料の数や予測値の精度も、基本的にDeep Researchが上回っているため、AIで未来予測を行うときは、Deep Researchの利用をおすすめします。
未来予測にDeep Researchを使うときは、利用するAIの特徴を知っておくことも重要です。
Gemini、ChatGPT、Microsoft Copilotで未来予測を行うときは、以下のおすすめの利用シーンを参考にしてみてくださいね。
もし複数のAIを利用できる環境であれば、Microsoft Copilotで根拠となるデータを収集し、そのデータをGeminiやChatGPTのプロンプトに組み込むことがおすすめです。
これにより、予測データの根拠をより明確にできるはずです。
🖊️まとめ
今回は、Gemini、ChatGPT、Microsoft Copilotを使って、実際に未来予測を行い、その結果を検証しました。
Deep Researchは、数分〜数10分で根拠のある詳細なレポートを作成できる点が魅力の1つです。
一方で、生成AIごとに特徴が異なるため、インプットするデータの質を調整するなど、活用には工夫も求められます。
それでも、日々の業務の中で未来予測に多くの時間をかけている方には、業務効率を改善する可能性を秘めた機能と言えます。
ぜひ一度、そのリサーチ能力を試してみてはいかがでしょうか。
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