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マニュアルを作ろうとしても「構成が決まらない」「文章を書くのに時間がかかる」といった理由で、後回しにしていませんか?あるいは、「社内ツールの使い方がわからない」という問い合わせ対応に追われている方も多いのではないでしょうか。
通常、質の高いマニュアルを一つ作成するには、構成案の作成から執筆、推敲まで含めると平均で3時間程度かかるといわれています。しかし、ChatGPTを活用することで時間を短縮し、数十分程度でベースとなるマニュアルを作成することが可能です。
本記事では、ChatGPTを活用して「包括的で質の高いマニュアル」を作成する具体的な方法を解説します。
ChatGPTは、人間のように自然な対話ができるAIチャットサービスです。膨大なテキストデータを学習しており、質問に対する回答だけでなく、文章の要約、翻訳、アイデア出し、そして「マニュアルの構成・執筆」を得意としています。
ChatGPTをマニュアル作成に導入することで、具体的にどのような恩恵があるのでしょうか。主なメリットは以下の3点です。
白紙の状態から書き始めるのは重労働ですが、ChatGPTに要件を投げるだけで「8割完成した状態」の初稿が手に入るため、人間は微修正と確認に集中できます。
担当者の文章力に依存せず、常に一定のクオリティで分かりやすい説明文</spanが生成されます。表記ゆれや説明不足といった属人化のリスクを削減できます。
同じ手順書を「初心者向けに噛み砕いて」「海外拠点向けに英語で」といった要望にあわせて、瞬時に書き換えることが可能です。
ここでは、以下2つの条件をもとに、ChatGPTのマニュアル作成を検証します。
使用例①業務ヒアリング内容からの手順書作成
担当者から断片的に聞き取った「経費精算の流れ」を、全社員が利用する正式なマニュアルへ昇華させます。
使用例②エラーログからのトラブルシューティング集作成
Slackやメールに散在する過去の問い合わせ履歴を解析し、頻出するトラブルと解決策をFAQ形式で自動生成します。
使用例①②ともに、使用した条件は以下です。
1. ChatGPTにログインし、モデルを選択
2. プロンプトを入力して送信
3. 出力された内容を確認し、修正が必要か判断する
使用例①②それぞれの検証結果を「評価できる点」「修正が必要な点」の2つに分けてお伝えします。
担当者に聞いた「経費精算の流れ」を、全社員向けの正式なマニュアルに清書します。検証ポイントは「論理的整合性」「具体性」「工数削減率」の3つです。
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【プロンプト】
指示
あなたは熟練の総務・経理ディレクターです。
以下の「ヒアリングメモ」をもとに、全社員が迷わず、かつ不備なく申請できる正式な「経費精算マニュアル」を作成してください。
ターゲット
・全従業員(事務作業に慣れていない現場社員も含む)
ヒアリングメモ
・経費の締め日は毎月25日。
・領収書は必ず原本が必要。
・スマホの専用アプリで写真を撮ってアップロードする。
・その後、原本は経理にある専用ボックスに入れる。
・3万円以上の時は事前に上長の承認メールが必要。
・振込(精算金)は翌月10日。
・勘定科目がわからなかったら社内チャット(経理相談窓口)で聞いてほしい。
構成案
以下の項目を含めて作成してください。
1. 手順の全体フロー(一目でわかる時系列)
2. 各ステップの詳細な説明(スマホ操作や原本提出のタイミングなど)
3. 重要なルールと注意点(3万円の壁や期限について)
4. 困った時の問い合わせ先
制約事項
・専門用語を避け、誰が読んでも一回で理解できる平易な言葉を使うこと。
・「です・ます」調で、丁寧かつ簡潔なトーンを維持すること。
・箇条書きや太字を活用して、視認性を高めること。
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結論からお伝えすると、出力結果は実用レベルに達しており、マニュアル作成の初稿としては80点以上の出来栄えと評価できます。断片的な情報を単に並べるだけでなく、読み手への配慮や、不足している具体的な注意点をChatGPTが自ら補完しており、ゼロから執筆する手間を削減できています。
1. 評価できる点
「スマホで撮影」という断片的な情報に対し、「内容がはっきり見えるように」といった実用的なアドバイスを付け加えています。「原本が必要」という指示から「コピー不可」というルールを導き出すなど、経理実務の常識に則った補完がなされています。
2. 修正が必要な点
ヒアリングメモでは「3万円以上は事前承認」となっていましたが、出力されたフロー図では「領収書提出」の後に「上長の承認」が来ています。実務上、却下される際のリスクを避けるため、承認はフローの冒頭(申請前)に配置するよう人間が順序を入れ替える必要があります。
また、「領収書を紛失した場合」や「海外出張の場合」など、イレギュラーなケースへの言及はありません。これらは追加のプロンプトで指示を出すか、人間が追記する必要があります。
過去のSlackやメールでの問い合わせ履歴を読み込ませ、よくある質問(FAQ)と解決策のリストを自動生成します。検証ポイントは「重複の統合」「優先順位の判断」「解決策の抽出」「ノイズの排除」の4つです。
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【プロンプト】
指示
添付された「問い合わせログ(.txt)」をすべて読み込み、内容を詳細に分析した上で、社内ポータル用の「トラブルシューティング集(FAQ)」を作成してください。
目的
社員の自己解決率を向上させ、ヘルプデスクの負担を軽減する。
実行タスク
1. 【ログ解析】:添付ファイルから、繰り返し発生している問題や重要な障害報告を特定・分類してください。
2. 【FAQ作成】:解析結果に基づき、以下の構成でアウトプットしてください。
出力形式
1. 【重要】現在発生中の事象・緊急の回避策
※ログから読み取れる、直近で多くの社員に影響が出ている問題があれば優先的に記載。
2. トラブル解決ガイド(FAQ一覧表)
| トラブル事象 | 解決のための初動アクション | 詳細な手順・原因 |
| :--- | :--- | :--- |
| 例:VPN接続エラー | サーバーBへの切り替え | サーバーA負荷時の回避策として、設定画面からサーバーBを選択してください。 |
3. カテゴリ別・詳細解説
・ネットワーク、ツール操作、ハードウェアなど、カテゴリごとに重要な解決策を解説。
4. ヘルプデスクへの連絡ルール
・解決しなかった場合の連絡先と、伝えてほしい情報(エラーコード等)のまとめ。
制約事項
・ファイル内の挨拶や、FAQに関係のない雑談、個別タスク(備品発注等)は除外すること。
・IT初心者でも理解できるよう、専門用語は避け、操作手順を具体的に書くこと。
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結論、出力結果は散在した情報を文脈で紐付け、実用的な解決策として構造化する能力が高いです。複数のユーザーのやり取りを統合し、さらに「自己解決したユーザーの知恵」をFAQに反映させている点は、手動で行うよりも効率的です。
1. 評価できる点
複数名から報告があり、業務への影響が深刻な「VPN接続エラー」を、一つの項目に集約しつつ、「重要・緊急の回避策」として最上部に配置しています。
加えて、システム側の自動通知にあった「サーバーBへの切り替え」や、高橋さんが自己解決した際の「キャッシュクリア」という解決策を、ログの中から正確に拾い上げ、解決手順の核として構成できていました。無関係な情報も除外しており、純粋なトラブル解決ガイドとして成立させています。
2. 修正が必要な点
MacBookの動作遅延に対し、ログ内の「キャッシュ消去」は反映されていますが、原因がハード(ファン)にも及ぶ可能性については、もう一段深い技術的アドバイス(OSアップデートの確認など)の追記が望ましいです。
また、「サポートチームのメールアドレスやSlackチャンネル(it-helpdesk)」という記載が一般名詞に留まっているため、実際の運用にあたっては、組織固有の具体的なURLやアドレスに置き換える必要があります。
ゼロから構成案を練り、清書する作業の大部分をChatGPTに任せることで、作成工数の大部分を削減可能です。ChatGPTは、断片的なメモから文脈を読み取ったり、雑多なログから共通の課題を抽出したりする作業において、スピードを発揮します。
一方で、社内固有のルールや最新のシステム仕様に関しては、人間による最終的な確認が不可欠です。
そのため、ChatGPTでマニュアルを作成する際は、一度の出力で完璧を目指すのではなく、以下の「3ステップ」で運用することをおすすめします。
なお、ハイパーオートメーションツール「Yoom」では、ChatGPTのAPIと連携するシステムをノーコードで作成することが可能です。AI処理などを組みあわせることで、日々の繰り返し作業を自動化できます。気になる方はぜひチェックしてみてください。