・
海外SaaSツールの導入や海外市場の調査において、言葉の壁は依然として大きな課題です。「Google 翻訳で翻訳しても文脈がおかしい」「PDFの原文をコピーして翻訳ツールに貼り付ける作業が面倒」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、対話型AI「ChatGPT」を活用した翻訳機能に焦点を当てます。
単なるテキスト翻訳にとどまらず、文脈を理解した自然な表現や要約について検証し、工数をどれだけ削減できるか、その実力を徹底解説します。
ChatGPTは、OpenAI社が開発した対話型AIです。インターネット上の膨大なテキストデータを学習しており、人間と会話しているかのような自然な文章生成を得意としています。
単語をそのまま置き換えるのではなく、前後の文脈を読み取って適切な表現を選びます。
英語、中国語、韓国語、スペイン語など50以上の言語に対応しています。
「ビジネスメール調で」「要約して」「小学生にもわかるように」といった指示(プロンプト)を加えることで、出力結果を用途にあわせて調整できます。
翻訳だけでなく、要約、誤訳の指摘、特定要素の抽出など、翻訳に関連する作業を一括で行えます。
一方で、専門性が高い分野での誤訳リスクや、機密情報の取り扱いには注意が必要です。これらの特性を理解して使いこなせば、強力な翻訳アシスタントとなります。
本記事は、以下のような課題を持つ方を想定して執筆しています。
今回は、実際の業務で発生しがちな「長文読解」と「対外的なメール対応」の2つのシナリオで、その実力をテストします。
検証①海外SaaSニュース記事の要約翻訳
目的:英語の長文ニュース記事から、重要なポイントだけを日本語で把握し、チームに共有する
ポイント:要点が的確に抽出されているか、マーケティング用語が適切に訳されているか、日本語として自然か
検証②クレーム対応メールの丁寧な翻訳
目的:海外顧客からの問い合わせに対し、失礼のない丁寧なビジネス英語で返信を作成する
ポイント:謝罪のニュアンスが伝わるか、ビジネスライクで失礼がないか、不自然な直訳になっていないか
【ChatGPT】
ChatGPTを開く
プロンプトを入力して送信し、出力された内容を確認。微修正が必要か判断する
【Google 翻訳】
Google 翻訳を開く
結論からお伝えすると、Google 翻訳は単語や短いフレーズの確認には便利なものの、長文のビジネス文書やPDF資料の翻訳においては、文脈理解と要約能力を持つChatGPTのほうが精度が高く、実用的であるといえます。
【要点が的確に抽出されているか】
記事の核心を簡潔にまとめています。
Google 翻訳:
Google 翻訳は機能上、要約を行わず全文を翻訳します。そのため、情報の重み付けがなく、読者が自分で重要箇所を探す必要があります。
【マーケティング用語が適切に訳されているか】
ChatGPT:
ターゲット読者(ビジネスパーソン)を意識した用語選択がなされています。
Google 翻訳:
単語単位での辞書的な意味は合っていますが、ビジネス文脈に適さない訳語が見られます。
例:原文の「Amplify humans(人間の能力を拡張・強化する)」というニュアンスに対し、「人間を増幅させる」と訳しています。「増幅」は物理現象や音響に使われることが多く、人間に使うと違和感があります。
【日本語として自然か】
ChatGPT:
PDFの改行ノイズを自動的に修正・補完して翻訳しているため、文章として成立しています。「~でしょう」「~といわれています」など、記事のトーンにあわせた語尾調整が行われており、そのまま記事として公開できるレベルに近いです。
Google 翻訳:
接続詞や語尾が単調で機械的な印象を与えます。特に、PDFの改行位置で文章がブツ切れになるため、後から人間が大幅にリライトする必要があります。
結論、ChatGPTは、文脈を理解し、英語圏のビジネス習慣に則った「謝罪の定型句」を適切に選べています。
一方、Google 翻訳は、単語の意味をそのまま当てはめてしまい、文脈上の不適切な表現が混じっています。感情に関わる表現では、相手を不快にさせるリスクがあります。
【謝罪のニュアンスが伝わるか】
ChatGPT:
「deeply apologize(深くお詫びする)」「truly sorry(本当に申し訳ない)」といった感情のこもった表現を使い分けており、反省の意が伝わります。
Google 翻訳:
「we are extremely disappointed(私たちは非常にがっかりしている) 」という表現は、「期待外れでがっかりした」という意味合いが強く、謝罪の場面で使うと「自分たちのミスに自分たちががっかりしている(自己中心的)」、あるいは「客に対してがっかりしている」という奇妙なニュアンスになり、反省が伝わりにくいです。
【ビジネスライクで失礼がないか】
ChatGPT:
「falls short of the standard we aim to uphold(我々が掲げる基準に達していない)」というフレーズは、自社の不手際を認める際によく使われる、洗練されたビジネス表現です。
「Rest assured(ご安心ください)」という表現で、解決策を提示する際の安心感を与えています。
Google 翻訳:
冒頭で「We sincerely apologize」が2文連続しており、文章構成として稚拙な印象を与えます。
【不自然な直訳になっていないか】
ChatGPT:
文のつながりが滑らかです。
Google 翻訳:
「apologize for the fact that you received...(あなたが~を受け取ったという事実に対して謝罪する)」という部分は、「apologize for the incorrect delivery」や「apologize for sending the wrong item」と表現するほうが自然で簡潔です。
ChatGPTは文脈理解に優れていますが、その能力を最大限引き出すには「前提条件」を与えることが重要です。
「役割」と「背景」を伝える
単に「翻訳して」ではなく、「あなたはプロのライターです。ビジネスパーソン向けの記事として翻訳してください」や「怒っている顧客への丁寧な謝罪メールです」と伝えます。
「出力形式」を指定する
全文翻訳だけでなく、「要点を箇条書きで抽出してから翻訳して 」や「自然な日本語に意訳して」と指示しましょう。
Google 翻訳では、翻訳ツールに入れる前の「ひと手間」が精度を左右します。
改行(レイアウトノイズ)を削除する
Google 翻訳は改行を「文章の終わり」として処理する傾向があるため、メモ帳やWordに一度貼り付け、置換機能などで改行をスペースに変換し、一つの文章にしてから翻訳にかけてください。
直訳リスクを理解して使う
単語の第一義(辞書的な意味)が優先されがちです。そのため、専門用語や比喩表現が含まれる文章では、出力結果を鵜呑みにせず、違和感がある単語は別途調べ直す必要があります。
海外SaaSツールの調査や顧客対応といったビジネスシーンにおいて、最大のボトルネックは「翻訳後の手直し(リライト)」と「情報の取捨選択(要約)」です。
Google 翻訳は手軽ですが、ビジネスレベルの品質にするためには、人間が介入して修正する時間が多く発生します。
一方、ChatGPTは適切なプロンプトさえ入力すれば、「読むべき箇所の抽出」から「相手に配慮した表現」までをスムーズに完了できます。
結果として、本来人間が頭を使うべき「意思決定」や「戦略立案」に時間を割くためには、ChatGPTを翻訳アシスタントとして活用するのが最適解といえるでしょう。
複数のツールを組み合わせて業務を自動化できるYoomを活用し、翻訳が必要な業務も効率的に行えます。下記のテンプレートをコピーすることで、簡単に業務を自動化。気になる方はぜひチェックしてみてくださいね!
[Yoomとは]