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デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速に伴い、クラウドサービスの導入が一般化しています。クラウドサービス先進国のアメリカでは営業、マーケティング、人事、経理など、各部門が最適なSaaSを選択した結果、企業内で利用されるSaaSは平均100種以上にのぼるとも言われています。
その一方で、システムごとにデータが分断され(データのサイロ化)、手作業によるデータ連携が非効率やミスの原因となり、DX推進の大きな壁となっています。経済産業省が指摘する「2025年の崖」問題においても、既存システムの刷新とデータ連携の重要性がクローズアップされています。
このような背景から、今、「iPaaS(Integration Platform as a Service)」がシステム間の連携・統合を容易にするクラウドサービスとして注目を集めています。
本記事では、iPaaSの基本から、なぜ今必要とされているのか、導入することでどのようなメリットがあるのか、国内外の主要なiPaaS製品の比較、他技術との違い、そして導入を成功させるための具体的なステップまでを、2025年の最新トレンドも交えて徹底的に解説します。
システム連携の課題を解決し、DXを加速させたい情報システム部門のご担当者様や経営企画部門の皆様は、ぜひ本記事を参考に、iPaaSの導入を検討してみてください。
iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、Gartnerによると「オンプレミスおよびクラウド上のプロセス、サービス、アプリケーション、データを組み合わせて接続するインテグレーション・フローの開発、実行、ガバナンスを可能にするクラウドサービスのスイート」と定義されています。
簡単に言えば、企業が利用する様々なシステムやアプリケーションを、クラウド上で手軽に連携・統合するためのプラットフォームサービスがiPaaSです。SaaSのようにインターネット経由で提供されるため、自社でハードウェアやソフトウェアを用意する必要がなく、運用管理の負荷も軽減されます。
従来、企業のシステム連携はEAI(Enterprise Application Integration)やESB(Enterprise Service Bus)といったオンプレミス型のミドルウェアが主流でした。これらの技術は社内システム間の連携には有効でしたが、近年爆発的に増加するクラウドサービス(SaaS)や外部システムとの連携には対応が難しいという課題がありました。
特にSaaSは各社がAPI(Application Programming Interface)を公開しており、APIを介したシステム間連携が効率的です。iPaaSは、このAPIエコノミーを背景に、多数のSaaSやクラウドサービス、さらにはオンプレミスのシステムを効率的に、そして柔軟に連携させる基盤として急速に普及しました。
また、日本の「2025年の崖」問題(老朽化した基幹システムによる経済損失や保守人材不足)への対応として、多くの企業がレガシーシステムの刷新やクラウドシフトを進めています。この過程で、既存システムと新しいクラウドサービスを連携させるニーズが高まり、iPaaSがその解決策として注目されています。
IT調査会社ITRの調査によれば、日本のiPaaS市場は2021年度に前年度比36.6%増の28億円規模に急伸し、2026年度には115億円規模に達する見込みで、今後も高い成長が予測されています。これはSaaSの普及に加え、オンプレミスとクラウドが混在するハイブリッドIT環境への対応ニーズの高まり、そして新規参入ベンダーによる認知度向上などが要因と考えられます。
現代の企業活動では、顧客管理、営業支援、マーケティングオートメーション、経費精算、勤怠管理など、様々な業務で特化型のSaaSが利用されています。これらのSaaSはそれぞれ高機能で便利ですが、個別に導入された結果、システム間でデータが連携されず孤立した状態(データのサイロ化)が発生しやすくなっています。
例えば、営業がSFAに入力した顧客情報がマーケティング部門のMAツールに反映されなかったり、受注データが販売管理システムから在庫管理システムへ手作業で転記されたりといった、非効率な業務プロセスが蔓延しています。これは手作業の負荷増大だけでなく、データの整合性問題やヒューマンエラーのリスクを高め、迅速な意思決定や顧客対応を妨げる要因となります。
DXを推進し、変化の激しいビジネス環境に迅速に対応するには、部門やシステムを跨いだデータ連携と業務プロセスの自動化が不可欠です。しかし、個別にシステム連携を開発するには、専門的な知識や多くの開発工数が必要です。特にSaaSはアップデートも頻繁に行われるため、そのたびに連携部分の改修が必要になり、運用負荷も増大してしまいます。
iPaaSは、これらの課題を解決するための包括的な機能を提供します。豊富なコネクタを通じて様々なシステムに容易に接続でき、GUIベースの操作でデータの変換やワークフローを定義できます。これにより、システム間のデータ連携や業務プロセス自動化を専門知識がなくても比較的容易に実現できるようになります。手作業や個別開発の手間が省けることで、情報システム部門はより戦略的な業務に注力できるようになるのです。
まさにiPaaSは、複雑化した企業IT環境において、システムとシステム、人とシステムを効率的かつ柔軟に「つなぐ」ための、現代における必須のインフラと言えるでしょう。
iPaaS製品によって提供される機能は異なりますが、共通して核となる機能は以下の5つです。
これらの機能により、iPaaSは単なるデータ連携ツールに留まらず、企業全体の業務プロセスを統合・自動化し、ビジネスアジリティを高めるための強力なプラットフォームとなっています。
iPaaSの導入は多くのメリットをもたらしますが、いくつかの注意点もあります。導入検討にあたっては、両方を理解しておくことが重要です。
以上のように、iPaaSはメリットが大きい反面、適切な選定と運用設計が重要です。
現在、国内外で数多くのiPaaSソリューションが提供されており、それぞれに特徴があります。ここでは、グローバルで評価の高いベンダーから、日本市場で注目される国産ベンダーまで、主要なプロバイダーとその製品を比較し、選定のポイントを解説します。
国産スタートアップYoom社によるクラウド型iPaaSです。国内で利用されているアプリの網羅性が非常に高く、500種類以上のアプリケーションを直感的なUIUXで非エンジニアの方でも簡単に連携することが可能です。iPaaS機能だけでなく、RPA・AI・OCRなどの自動化技術を1つのサービス内で自由に連携することができます。価格帯はフリープランからの利用も可能、かつ有料プランでも1万円前後で利用することができ、はじめやすい価格設定である点も魅力的です。日本語でのサポート面やマニュアル面も充実しています。
国産スタートアップBizteX社によるクラウド型iPaaSです。プログラミング不要(ノーコード)でSaaSやAI-OCR、RPAなどのツールと連携が可能とうたっており、クラウドとローカル操作を組み合わせたバックオフィス自動化を得意とします。kintoneや奉行、Slackなど国内SaaSとの接続コネクタも充実しており、無料プランや月額3万円台からの有料プラン(実行回数に応じたプラン)を提供しています。中小企業でも導入しやすい価格体系で、日本語でのサポート体制も整っています。
老舗の国産EAIツールDataSpider Servistaのクラウド版です。ノンプログラミングで複雑なデータ変換・連携が可能で、特に日本企業のレガシー環境(ホストや古いDB)や文字コード変換など細かな点も行き届いています。オンプレミスとのハイブリッド連携が可能で、国内大企業(メーカー系、流通など)での実績も豊富です。ただし、DataSpider Cloudは2025年にサービス終了予定で、後継は新製品「HULFT Square」に統合されています。
国内発 iPaaS で、アクトレシピ株式会社が提供しています。有償契約企業の平均従業員数は3,800名とエンタープライズ比率が高いことが特色です。SmartHR・LINE WORKS・DocuSignなどのSaaSだけでなく、各種銀行APIなどとのノーコード連携を提供している点も特徴です。
国産スタートアップ Anyflow株式会社(2024 年12 月に脱炭素クラウド「ASUENE」を運営するアスエネ社の完全子会社化)によるクラウド型 iPaaS です。プログラミング不要のノーコード UI で、Salesforce・Slack・CloudSign・Zoom など国内外 SaaS の API を組み合わせたワークフローを構築でき、バックオフィスや営業プロセスの自動化に強みがあります。kintone、freee、Chatwork、Sansan など日本市場特有のサービスを含む100種類超のコネクタを標準搭載しています。現在は新規の受付を停止しているようです。
Salesforce傘下の米国発iPaaSリーダーです。API主導の統合に強みを持ち、オンプレミスのMule ESBとクラウドのCloudHubを組み合わせたハイブリッド統合が可能です。数百種類に及ぶ広範なコネクタと強力なAPI管理機能を備え、金融などミッションクリティカルな大規模システム統合に強みを発揮します。価格はエンタープライズ向けで高めですが、幅広い対応力と信頼性に定評があります。日本法人もあり、ANAやアシックスなどの国内大手での採用実績があります。
2008年にDell社が最初の本格iPaaSとして発表した老舗サービスで、現在は独立企業となっています。クラウドネイティブな統合におけるパイオニアで、数千種類のコネクタに加え、マスタデータ管理(MDM)機能やB2B/EDI、API管理など5種類のアプリ群で構成されています。ノーコード開発環境で使いやすく、業界最高水準の稼働率とセキュリティに定評があります。全世界でユーザー数20,000社を突破しており、日本でも大日本印刷(DNP)グループなどで採用されています。扱いやすさと安定性のバランスが良いと評価されており、Nucleus Research 2024年レポートでは総合リーダーの一角とされています。
米国発のノーコード自動化プラットフォームで、米国のサービスを中心に8,000種類超のクラウド/SaaSアプリを連携可能です。タスク課金型の価格体系と無料プランがあり、個人〜中堅規模でも始めやすい一方、エンタープライズ版ではSSO・監査ログ・ガバナンス機能を備え大規模運用にも対応します。英語でのみサービスを提供しており、サポートも基本的にはセルフサーブベースのため、利用には一定のITリテラシーが求められます。
チェコ発祥のビジュアルiPaaSで、2,400以上のアプリを円形ノードのフロー図で直感的に連結できる点が特徴です。1シナリオ内でループ処理・イテレーション・Webhooks・エラー分岐を細かく制御でき、複雑なETLやRPAライクな処理までノーコードで構築可能。料金は「オペレーション(実行回数)」課金でZapierより廉価なプランが多く、個人の副業から大企業のバックエンド統合まで幅広くカバーします。ローコード開発者向けの“作り込み型”iPaaSとして評価が高まっています。
2013年創業の新興米国ベンダーで、近年ガートナーMagic Quadrantのリーダー常連です。ノーコード自動化プラットフォームとしての使い易さに特に定評があり、年間売上規模50億~1000億円クラスの企業を中心に導入が進んでいます。SalesforceやSlackなど200以上のアプリとの連携レシピを備え、複雑なビジネスロジックを含むワークフローもコーディング不要で短期間に実現できます。チャットボット連携機能(Workbot)も特徴の一つです。2021年に日本法人も設立され、サポートの手厚さにも高評価があります。Workatoは21,000社以上の企業で利用されており、業務部門とIT部門が協力してガバナンスを保ちつつ自動化を推進できるのが特徴です。
米Informatica社はデータ統合分野の老舗で、ETLツールのPowerCenterで知られてきました。そのクラウド版であるInformatica Cloud(IICS)は、アプリ統合だけでなく大規模なデータ統合・品質管理まで含めたプラットフォームです。ETLやデータマスキング、マスターデータ管理(MDM)等、データエンジニアリング機能が豊富でデータ統合のリーダーとも称されます。一方で、利用者からはサポート対応にばらつきがあるとの指摘もあります。大規模組織での実績は多数で、グローバルではCiscoやGE、日本でも金融機関などミッションクリティカルな用途で導入されています。
マイクロソフトは自社クラウドAzure上でAzure Logic AppsというiPaaS機能を提供しています。ビジュアルデザイナーでシナリオを構築でき、200以上のAzure連携コネクタやオンプレ接続用Gatewayを備え、複雑なワークフローやステートフルな長期フロー、イベント駆動のサーバーレス統合が実現できます。また、Office製品と親和性の高いPower Automate(旧Flow)は、業務ユーザー向けのクラウド自動化ツールで、広義のiPaaSに含めることも可能です。ノーコードで手軽にSaaS間のタスク自動化ができ、Microsoft 365ユーザーに広く利用されています。MicrosoftはGartner Magic Quadrantでもリーダー常連であり、国内でも安心感から採用する企業が多いベンダーです。
2012年創業の米スタートアップ発のiPaaSです。ノーコードの汎用自動化プラットフォームとして、マーケティングや営業部門など業務ユーザーにも使いやすいUIを提供しています。1,000以上のコネクタと柔軟なドラッグ操作ワークフローにより、「汎用型Zapierのエンタープライズ版」といった位置付けです。Nucleus Researchでは2024年のリーダー群に位置付けられ、機能の充実と使いやすさを両立していると評価されています。
ドイツ・ベルリン発のオープンソース/“fair-code”型iPaaSで、ノード(円形アイコン)を線で結ぶビジュアル UI が特徴です。セルフホストは MIT ライクに無償で使え、HTTP/GraphQL リクエストやカスタム JS・Python コードも同一ワークフロー内に埋め込めるため、Developer向けのiPaaSとして台頭してきています。料金は実行回数課金で、オンプレミス要件やエアギャップ環境にも対応できる点が金融・公共分野で評価されています。
近年注目されているのが、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)が自社SaaSに統合機能として組み込む「組み込み型iPaaS(Embedded iPaaS)」です。これにより、ISVのSaaSを利用するエンドユーザーは、そのSaaSを通じて他のアプリケーションと容易に連携できるようになります。例えば、CRMベンダーがEmbedded iPaaSを組み込めば、顧客がCRM画面から会計ソフトとデータ連携設定を行えるようになります。主なプレイヤーとしては、グローバルのParagonなどが挙げられ、SaaSベンダーが顧客満足度向上や市場拡大のために活用しています。国内ではAnyflow Embedなどのサービスが台頭してきています。
多様なiPaaSの中から自社に最適なものを選ぶためには、以下の点を中心に比較検討することが重要です。
接続したいシステム/サービス
必要なコネクタが豊富に用意されているか、オンプレミスシステムとの連携は可能か、カスタムコネクタ開発の必要性などを確認します。
必要な統合シナリオ
シンプルなデータ連携か、複雑なワークフロー自動化か、大量データ処理か、リアルタイム性が必要かなど、自社の要件に合った機能を持つか確認します。
操作性/開発容易性
担当者のスキルレベル(IT部門か業務部門か)に合わせて、ノーコード/ローコード開発環境の使いやすさや、日本語対応などを評価します。
価格体系
料金体系(サブスクリプション、従量課金など)が自社の利用規模や成長予測に合っているか、費用対効果をシミュレーションします。隠れたコストがないかも確認が必要です。
セキュリティ/コンプライアンス
データの暗号化、アクセス制御、監査ログ、各種セキュリティ認証(SOC2, ISO27001など)の取得状況、国内リージョンの有無などを確認し、自社のセキュリティポリシーに適合するか判断します。
サポート体制
日本語でのサポートの質、迅速さ、技術的な相談が可能か、導入支援パートナーは豊富かなどを評価します。ユーザーコミュニティの活発さも参考になります。
スケーラビリティと信頼性
将来的なデータ量や処理負荷の増大に耐えられるか、サービス稼働率は十分かを確認します。
導入実績
自社の業界や規模での導入実績、成功事例があるかどうかも参考になります。
上記の比較ポイントを参考に、複数のiPaaS製品の無料トライアルやPoC(概念実証)を実施し、自社環境で検証した上で最適な製品を選定することをおすすめします。
iPaaSは様々な業務プロセスやシステム連携に活用されています。ここでは代表的な活用シーンと、実際にiPaaSを導入し成果を上げた国内外の企業事例を紹介します。
iPaaSは主に以下のようなシーンで活用されます。
SaaS間連携
kintoneの顧客情報をHubSpotに連携してメール配信を自動化したり、受注データを会計システムや在庫管理システムに自動登録したりするなど、複数SaaS間のデータ同期やプロセス自動化に広く利用されます。
オンプレミスとクラウドの連携
基幹システム(ERPなど)のデータをクラウド上のBIツールに連携して分析したり、SaaSからのデータをオンプレミスのデータベースに格納したりするなど、ハイブリッドIT環境でのデータ連携に活用されます。
B2B連携/EDI
取引先との受発注データや在庫情報などをシステム間で自動連携し、業務効率化やリードタイム短縮を実現します。
データ統合/ETL
複数のデータソースからデータを抽出し、加工・変換してデータウェアハウスやデータレイクに格納するなど、BIや分析、データ活用基盤構築のためのデータ統合に利用されます。
業務プロセス自動化
入社・退職時のアカウント発行、契約書の承認フロー、問い合わせ対応など、複数のシステムや承認者を跨がる複雑な業務プロセスをワークフローとして自動化します。RPAやチャットボットとの連携によるハイパーオートメーションの基盤としても活用されます。
API連携/管理
システムやサービスが提供するAPIを呼び出して連携処理を行ったり、iPaaS上で作成した統合処理をAPIとして公開・管理したりする用途にも利用されます。
グローバルに展開するスポーツ用品メーカーのアシックス社では、国・ブランドごとに独立していた基幹システムを統合するため、MuleSoftのAnypoint Platformを導入しました。顧客情報・注文・在庫データが各システムに分散していたため一貫サービスが提供できず、EC事業に課題がありましたが、MuleSoftにより10以上の主要システムをAPI接続し、新しい共通Eコマース基盤へのデータ統合に成功しました。これにより各国システムのサイロ化が解消され、世界規模で統一した顧客サービス提供が可能となりました。
同社の情報システム子会社であるDNP情報システムは、老朽化した基幹システムとSalesforceなど新しいSaaSとのデータ連携をBoomiで構築しました。評価段階ではPoCを行い、クラウドと基幹のデータをセキュアかつ迅速につなげること、またビジネス部門からの要求に迅速対応できることを重視しました。結果としてBoomi導入により当初見込みの半分の期間で連携を実現でき、サーバー構築不要によるコスト削減や複数拠点からの開発効率向上も達成しました。
業務チャット大手のSlack社は、自社の受注〜請求プロセスの自動化にWorkatoを採用しました。以前は受注データのシステム間転記に人手がかかっていたものをWorkatoで統合し、93%の注文処理を自動化することに成功しました。これは当初目標の90%を上回る成果で、さらにシステム稼働時間もほぼ100%を達成したとのことです。Slack社の場合、自社が提供するSlackとWorkatoの連携ボット「Workbot」も活用し、Salesforceの商談情報をSlack上から参照・操作できる仕組みを実現しました。これにより営業担当の効率が飛躍的に向上したとのことです。
経路検索サービスで有名なナビタイム社では、社内の経費精算や情報連携に残っていた手動プロセスを一掃するためWorkatoを導入しました。複数存在した経費申請方法をSlackに集約し、提出に伴うチェック・保存・データ入力を自動化することで、年間数百時間の業務時間削減を実現しています。またSlackで経費申請状況の通知や承認をBotがサポートし、人とシステムの協調を図っています。Workato導入により、全社の業務プロセス自動化が大きく前進し、社員・経理部双方の負荷軽減に繋がったとのことです。
オンラインプログラミングスクール「TechAcademy」等を運営する同社では、急成長に伴い営業案件管理が属人化していた課題に対し、国産iPaaSのAnyflowを導入しました。AnyflowはノーコードでSFAやチャットツール等を連携できるサービスで、同社では重要な変化のみを通知するなど商談管理の自動化を構築。結果、営業マネジメント作業時間を3分の1に削減できたと報告されています。
これら事例から分かるように、iPaaS導入の効果は「業務時間の大幅削減」「データ反映のリアルタイム化」「人的ミスの排除」「顧客サービス向上」など多岐にわたります。特にクロスシステムな業務プロセスにおいて強力な武器となります。
iPaaS以外にも、システム連携や業務自動化に関連する様々な技術があります。それぞれの違いと使い分けを理解することで、iPaaSの立ち位置がより明確になります。
EAIやESBは、主にオンプレミスの社内システム間連携のために発展した技術やアーキテクチャです。ESBは、企業内に「バス」と呼ばれる共通基盤を設け、各アプリケーションがこのバスを介してメッセージをやり取りすることで連携を実現します。これにより、システム間の依存関係を減らし、変更に強くするという思想に基づいています。
iPaaSは、このEAI/ESBの機能をクラウド上でサービスとして提供するものと捉えることができます。ESBが自社でサーバーを構築・運用する必要があるのに対し、iPaaSはクラウド上のマルチテナント環境で提供されるため、インフラ管理の負荷が軽減されます。また、EAI/ESBは社内システム連携が中心でしたが、iPaaSはSaaSやクラウドサービス、外部パートナーシステムとの連携に強みを持っています。ガバナンスやトランザクション処理など高度な機能はEAI/ESBが優れる場合もありましたが、近年はiPaaSも同等の機能を備える製品が増えています。新規に連携基盤を構築する場合、クラウド連携が中心であればiPaaSが有力な選択肢となりますが、既にEAI/ESB資産がある企業は、iPaaSと共存させて段階的にクラウドへ移行する戦略も取られています。クラウド時代においては、iPaaSがEAI/ESBの役割を代替・発展させていると言えるでしょう。
ETLは、複数のデータソースからデータを抽出し(Extract)、必要な加工・変換を行い(Transform)、目的のデータベースやデータウェアハウスに格納する(Load)一連のプロセスです。主に、BI(ビジネスインテリジェンス)やデータ分析のために大量のデータを集約・加工する目的で利用されます。
iPaaSとETLの大きな違いは、iPaaSがアプリケーション間のリアルタイムまたはニアリアルタイムなデータ連携や業務プロセスの自動化に強みがあるのに対し、ETLは主にバッチ処理による大量データの一括処理に特化している点です。また、iPaaSはシステムが持つ機能自体をAPI経由で呼び出してプロセスを自動化できますが、ETLはデータの移動と加工が中心です。しかし、近年は多くのiPaaSがETL機能も備えるようになり、ETLツールもクラウド化してリアルタイム連携機能を追加するなど、両者の境界は曖昧になりつつあります。使い分けとしては、「業務アプリ間をつないで迅速なプロセスを自動化したい」場合はiPaaSが、「BIや分析のために大量のデータを定期的に集約・加工したい」場合はETL製品が適任と言えるでしょう。iPaaSはリアルタイム性やクラウド・オンプレ混在への対応で優位性があります。
RPAは、ソフトウェアロボットが人間のPC操作(画面上のクリック、キーボード入力、データコピー&ペーストなど)を模倣して定型業務を自動化するツールです。APIが提供されていないレガシーシステムや、Webブラウザ、Excel、デスクトップアプリケーション上の操作自動化に効果的です。
iPaaSとRPAの最大の違いは、iPaaSがシステムの「裏側」(APIやDB)で連携するのに対し、RPAはシステムの「表側」(UI)で操作を自動化する点です。このため、iPaaSは大量データでも高速・安定した処理が可能でUI変更にも強いですが、RPAは処理速度に限界があり、画面レイアウトの変更に影響を受けやすいという弱点があります。一方で、RPAはiPaaSでは直接連携できないAPI非公開のシステムや、どうしても手作業が残ってしまう業務を自動化できる強みがあります。多くの企業では、iPaaSでシステム間連携の基盤を構築し、それでも自動化できない部分をRPAで補完するという形で両者を組み合わせて活用しています。最近では、iPaaSの中にRPA機能を内包したり(BizteX Connect等)、RPA製品がAPI連携機能を強化したりと、両者の連携・融合も進み、ハイパーオートメーションと呼ばれる領域を構成する要素となっています。要するに、iPaaSはシステム間連携の基盤、RPAは人の操作自動化ツールであり、目的と対象によって適材適所で使い分けます。
このように、各技術には得意分野があり、どれか一つで全てを賄うのではなく、目的や連携対象に合わせて適切な技術を選定し、必要に応じて組み合わせて活用することが、現代の企業IT戦略においては重要となります。iPaaSは、その中でも特にクラウド時代における様々なシステム連携の中心的な役割を担うプラットフォームと言えます。
自社に最適なiPaaSを選定するために、以下のチェックリストをご活用ください。
☑️ チェック連携対象システムの網羅性
自社が連携したい主要なSaaS、オンプレミスシステム、データベースなどに対応するコネクタが標準で豊富に用意されているか、また特殊なシステムとの連携が必要な場合、カスタムコネクタ開発は可能か、オンプレミス接続の方式(エージェント、VPNなど)は適切かなどを確認しましょう。
☑️ ノーコード/ローコード開発環境の使いやすさ
開発担当者(IT部門または業務部門)にとって直感的で扱いやすいUIか、データマッピングやワークフロー構築が容易か、テスト、デバッグ、バージョン管理機能は十分か、日本語に対応しているかなどを評価しましょう。
☑️ ワークフロー自動化機能の充実度
条件分岐、ループ、エラー処理、リトライ、並列処理、承認フローなど、必要なビジネスロジックを表現できる柔軟性があるか、またイベント駆動、スケジュール実行、API呼び出しなど、多様なトリガーに対応しているかを確認しましょう。
☑️ データ変換・処理機能の性能
連携したいデータ量に対して、高速かつ安定的に処理できるか、複雑なデータ変換や、ETL的なバッチ処理にも対応できるかなどを確認しましょう。
☑️ セキュリティ・コンプライアンス対応
通信・データの暗号化、アクセス制御(RBAC)、認証方式(多要素認証、SSOなど)は十分か、主要なセキュリティ認証を取得しているか、関連法規への準拠に対応しているか、データの保存場所のリージョン選択は可能か、監査ログの記録・参照は可能かなどを確認し、自社のセキュリティポリシーに適合するか判断しましょう。
☑️ モニタリング・運用管理機能
稼働中の連携フローを一覧で確認できるか、エラー発生時のアラート通知機能や、原因究明のためのログ追跡機能は充実しているか、パフォーマンス監視機能は備わっているかなどを確認しましょう。
☑️ スケーラビリティと信頼性
将来的なデータ量や連携シナリオの増加に対して、柔軟にスケールできるか、ベンダーが提示する稼働率(SLA)は十分か、障害発生時の対応体制は確立されているかなどを確認しましょう。
☑️ コスト体系と透明性
料金体系(サブスクリプション、従量課金)が自社の利用実態や予算予測に合っているか、どのような項目で課金されるかが明確か、将来的な利用拡大時の費用増加シミュレーションは可能かなどを確認しましょう。
☑️ 日本語サポートと国内実績
日本語での技術サポートや問い合わせ対応が可能か、国内での導入実績や成功事例は豊富か、日本語でのドキュメントやトレーニング教材は充実しているかなどを確認しましょう。
☑️ ベンダーの将来性・ビジョン
iPaaS市場におけるベンダーの立ち位置や、将来的な製品ロードマップ(AI連携、新機能など)はどうか、長期的なパートナーとして信頼できる企業かなどを評価しましょう。
☑️ 市民開発(ビジネス部門活用)への適性
IT部門だけでなく、業務部門のユーザーが一部の統合フロー構築や運用に関与させたい場合、そのための機能やサポート体制が整っているか、テンプレートや共有機能は充実しているかなどを確認しましょう。
☑️ API管理機能の有無
iPaaS上で構築した統合フローを外部にAPIとして公開・管理したい場合、APIゲートウェイや開発者ポータルといった機能が備わっているかを確認しましょう。
☑️ B2B/EDI対応
特定の取引先とのB2B連携やEDI連携が必要な場合、そのためのアダプタや機能が充実しているかを確認しましょう。
☑️ データ品質/MDM機能の有無
データ統合において、データのクレンジングや重複排除、マスターデータ管理(MDM)といった機能が必要な場合、それらが提供されているか、または連携できるかを確認しましょう。
これらのチェック項目に基づき、自社の要件に優先順位を付けながら、複数の候補製品を比較検討することで、失敗のリスクを減らし、最適なiPaaSを選定できるでしょう。
クラウド統合基盤として定着しつつあるiPaaSですが、技術進歩に伴いさらなる進化を遂げています。2025年以降のiPaaSトレンドとして注目すべきキーワードを紹介します。
AI技術の活用はiPaaS分野にも波及しています。今後は、単なる自動化に留まらず、AIが統合プロセス自体をインテリジェント化する「インテリジェントIntegration」が進むでしょう。具体的には、AIがシステム間のデータマッピングを自動で提案したり、過去の利用パターンから最適なワークフローをレコメンドしたりといった機能が強化されています。さらに、生成AIを活用し、自然言語で指示するだけでiPaaSが自動的に連携フローを生成するような機能も実用化が進む可能性があります。AIによる異常検知(想定外データフローを検出してアラート)や、処理最適化の自動学習なども研究されており、さらにChatGPT等の外部AIサービスとiPaaSの統合も盛んです。iPaaS経由で生成AIを呼び出し、業務プロセスにAI回答を組み込む(例:問い合わせ内容をAI分析し自動振り分け)といった高度なワークフローが実現可能になっています。YoomやWorkatoではワークフロー内に生成AI機能群を追加し、Slackの問い合わせにAIが返答するフローなどのAIワークフローを構築することが可能です。今後は「統合+AI」が標準機能化し、プラットフォーム自体が学習してより簡単に質の高い統合を実現する方向に進むでしょう。
従来のiPaaSはAPIやスケジュール実行が中心でしたが、近年イベント駆動型アーキテクチャ(EDA)への対応が注目されています。EDAとは、システム間で発生するイベント(例:在庫変化、取引成立など)をリアルタイム配信し、それをトリガーに処理を実行する方式です。Boomiはイベントブローカー大手のSolaceと提携し、イベントドリブン統合を推進しており、MuleSoftやAzure Logic Appsもネイティブにイベントグリッド/ブローカーと接続可能です。これにより真のリアルタイム統合が可能となり、例えば「センサーからイベントを受けたら即座に在庫引当と通知を行う」といったストリーミング統合シナリオがiPaaS上で実装できます。2024年の調査でもリアルタイムモニタリングと分析がiPaaSの重要機能として強化されていると報告されています。今後、金融やIoT分野などミリ秒単位のリアルタイム性が要求される領域で、イベントドリブンiPaaSの活用が進むでしょう。
ガートナーが提唱するComposable Enterprise(組み合わせ可能な企業)において、iPaaSは重要な役割を果たします。Composable Architectureとは、企業ITを再利用可能なモジュール(部品)の集合体と捉え、ビジネスの変化に応じてこれらの部品を素早く組み替えることで、柔軟かつ迅速に新機能やサービスを開発・提供するアーキテクチャです。iPaaSは、異なるシステム間のデータ連携やビジネスロジックを、再利用可能な「統合部品」として定義・公開する役割を担います。これにより、アプリケーション開発者は必要な統合機能をiPaaSのサービスカタログから選択し、自社のアプリケーションに容易に組み込むことができるようになります。例えば「顧客マスタ照会」と「在庫引当」という2つの統合フローを、それぞれAPI公開しておき、新規サービス開発時にそれらを呼び出して組み合わせるといった使い方が考えられます。コンポーザブル時代にはビジネス要件の変化に迅速に対応することが求められるため、コードを書き直さずフローの組み替えで対応できるiPaaSは重宝されます。今後はiPaaSが企業の統合サービスカタログのような役割を果たし、アプリ開発者は必要なデータ連携機能をiPaaSから選んで組み込む、というのが主流になると予想されます。つまりiPaaSが企業の統合部品のハブとなり、エンタープライズシステム全体を統合する鍵となるでしょう。
デジタル化とシステム連携が進むほど、データ連携のセキュリティ重要性も増しています。iPaaS各社は引き続きゼロトラストセキュリティの考え方を取り入れ、認証・認可の高度化や、機微データのマスキング機能、監査証跡の強化などを進めています。特に2025年は欧州のGDPRや日本の改正個人情報保護法など各種規制がより厳格化する見込みで、グローバルなデータ保護規制への準拠が大きなテーマです。そのため、マルチリージョン対応(データを地域内に留める)、アクセス権限の細分化、暗号鍵管理の強化などが求められます。SyncMatters社の調査でも「企業は堅牢な暗号化・多層認証・グローバル規制遵守を提供する統合ソリューションを求めている」と指摘されており、実際多くのiPaaSがSOC2やISO27001の取得は当たり前になり、米国政府向けFedRAMP認証取得を目指す動きもあります。またデータガバナンスと統合の連携もトレンドで、データカタログやメタデータ管理ツールとiPaaSを連携し、データの出所追跡(Data Lineage)を実現するケースも増えています。総じて、「速さ」だけでなく「安全で統制された統合」がこれからのキーワードであり、自社でiPaaSを活用する際も、セキュリティポリシー部門と協調し、ガバナンスガイドライン(例えばコネクタ利用時の認証情報管理ルール等)を策定しておくことが望ましいでしょう。
特定の業界に特化した「Industry-specific iPaaS」や「Vertical iPaaS」も増加しています。これらのiPaaSは、特定の業界で広く利用されているアプリケーションや、業界特有のデータ形式(例:医療業界のHL7/FHIR)に対応するコネクタやテンプレートを豊富に備えています。例えば医療業界向けにHL7/FHIRといった医療標準プロトコルのコネクタを充実させたものや、保険業界向けに特定ソフト(iPipelineなど)との専用連携を提供するものがあります。日本でもECに特化したiPaaSを提供するベンダーも出てきており、今後大手ソフトウェア企業が自社業務パッケージにiPaaSをバンドル提供するケースも増えそうです。ユーザー企業側としては、自社業界で実績のあるiPaaSを選ぶことで、必要な機能が網羅されている安心感と導入ノウハウを得られる利点があります。
以上のようなトレンドを踏まえ、iPaaS市場は今後も高機能化・高度化しつつ、更に使いやすく安全になっていくでしょう。ユーザー企業としては、これら新機能をうまく取り入れることで、より高度な自動化やビジネス変革を実現できる可能性があります。
情シス担当者や経営層からiPaaS導入に際してよく寄せられる質問や懸念点をQ&A形式で整理します。
Q1. iPaaSはどのような企業に適していますか?
A: 複数のクラウドサービスや業務システムを利用しており、システム間のデータ連携・統合に課題を感じている企業全般に適しています。特に、部門ごとに異なるSaaSを使っていてデータが分断されている場合や、オンプレミスとクラウドが混在するハイブリッド環境の企業に有効です。また、既存の属人的なExcelマクロやスクリプト連携が限界に来ているようなケースでも、iPaaSで標準化・自動化することで可搬性・拡張性を高めることができます。規模で言えば中堅~大企業が主な導入層ですが、最近は中小企業向けに低価格プランを用意したサービスもあるため、IT人材不足を補いたい中小企業にも選択肢が広がっています。
Q2. iPaaS導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
A: iPaaSの料金体系はサービスや利用規模によって様々です。一般的にiPaaSは月額または年額のサブスクリプション制で提供され、料金は連携するシステムの数(コネクタ数)、実行される処理の回数(タスク数/オペレーション数)、データ量、利用する機能モジュール(MDMやAPI管理など)などに基づいて決定されることが多いです。中小規模向けには月額1万円程度から利用できるサービスもあり(例:Yoomは月9,600円~)、エンタープライズ向け高機能製品では年間数百万円以上になるケースもあります。またPoC用途に限り無料トライアル期間を設けているサービスも多いため、契約前に必ず見積もりを取り、自社の接続シナリオ全体では年間いくら程度になるか試算してください。なお、自社で個別開発するコスト(サーバーや人件費)と比較すると、iPaaSの方がトータルでは安価になるケースも多々あります。そのため、初期費用と運用費を合わせたROIで判断するとよいでしょう。
Q3. iPaaSの導入と統合フロー開発にはどれくらいの期間がかかりますか?
A: これも連携するシステム数や複雑さによって大きく異なります。単純な2システム間のデータ同期であれば、早ければ数分程度で開発・稼働まで完了することもあります。一方、10以上のシステムを含む複雑な統合プロジェクトだと、数日〜数週間を要する場合もあります。
Q4. クラウド型のiPaaSはセキュリティ的に安全でしょうか?
A: はい、主要なiPaaSベンダーは強固なセキュリティ対策を講じています。データ通信のSSL/TLS暗号化、データ保存時の暗号化、サービスへのアクセス制御(IP制限や多要素認証)などは標準で提供され、クラウドサービスであるため物理的なサーバーセキュリティもプロバイダ側で万全に管理されています。さらに各社ともGDPRやHIPAAなどグローバルなデータ保護規制に準拠し、SOC2やISO27001といった監査報告書も取得済みです。実際、エンタープライズ向けiPaaSの多くは金融機関や官公庁でも利用されていますが、それでも不安な場合、データを保存しないステートレスモードや、オンプレミスにデータを保持したまま処理だけクラウドで行う構成を検討するとよいでしょう。一部国内サービスではデータセンターを日本国内に限定するなど配慮しているサービスもあります。重要なのは、自社のセキュリティ要件をベンダーに伝え、対応状況を確認することです。総じて、信頼できるiPaaSであればオンプレ自前統合より高水準のセキュリティが確保できるケースも多いと言えます。
Q5. iPaaSの利用・開発にはどのようなスキルが必要ですか?
A: 専門的なプログラミングスキルは基本的に不要です。iPaaSはローコード/ノーコード開発を可能にする設計になっており、GUI上で設定できるため、ITに詳しくない業務部門スタッフが自ら簡単なワークフローを作成できた事例もあります。ただし、ツールによるところが大きく、操作が複雑なツールではJSONやXMLといったデータ形式の知識、APIの概念、各システムの業務ロジック理解などが必要となる場合もあります。導入する前に実際にインターフェースを触ってみて検証することをお勧めします。
Q6. RPAではなくiPaaSを使うメリットは何ですか?両者の違いは?
A: 簡潔に言えば、iPaaSはシステム間のデータ連携を自動化するプラットフォームであり、RPAは人間のPC上の定型操作を自動化するソフトウェアロボットです。iPaaSはAPI等を通じてシステム内部に直接アクセスするため、高速・大量データ処理が可能で、UIの変更にも影響されません。一方RPAは画面上の操作を再現するため、大量データには時間がかかり、画面レイアウト変更で動作不能になるリスクがあります。メリットとして、iPaaSは堅牢かつスケーラブルな統合を実現でき、より広範なシステム間連携(クラウド含む)に対応できます。RPAはAPIの無い古いシステムや人手作業そのものを自動化できる点がメリットであり、使い分けとしては、基本はiPaaSでシステム連携を構築し、それでも残る手作業部分のみRPAで補うのがおすすめです。実際、多くの企業が両者を組み合わせて活用しています。
Q7. オンプレミスの基幹システムとも連携できますか?
A: iPaaS製品によってはオンプレミスの基幹システムやデータベースとの連携にも対応しています。これは主に、社内ネットワーク内に専用のエージェントをインストールしたり、VPNや専用線でクラウド環境と接続したりする方式で実現されます。レガシーシステムでAPIが整備されていない場合は、データベースやファイルでの連携、あるいはカスタムアダプタの開発が必要になることがあります。導入前に、連携したいオンプレミスシステムの仕様をベンダーに伝え、連携方式や必要な要件を確認することが重要です。
Q8. ノーコード開発(ビジネス部門によるiPaaS活用)は安全に進められますか?
A: ノーコード開発は業務効率化を加速する可能性を秘めていますが、セキュリティやガバナンスの確保が重要です。多くのiPaaSはユーザー権限管理やモニタリング機能を提供しており、IT部門がプラットフォーム全体を管理し、市民開発者が利用できる範囲や機能を制限することができます。また、社内ガイドラインを策定したり、市民開発者向けのトレーニングやサポート体制を整備したりすることで、安全なノーコード開発を推進することが可能です。IT部門が主体となり、統制の取れた環境でビジネス部門の活用を促進するアプローチが推奨されます。
本記事では、SaaSの乱立とデータ分断、そして「2025年の崖」への対応といった背景から注目を集めているiPaaSについて、その定義、必要性、機能、メリット・デメリット、主要製品比較、他技術との違い、そして最新トレンドまでを詳しく解説しました。
iPaaSは、クラウドサービスやオンプレミスシステムを含む様々なシステムを効率的に「つなぎ」、手作業によるデータ連携や業務プロセスを自動化するためのクラウド型プラットフォームです。豊富なコネクタ、ノーコード/ローコード開発、強力なワークフロー自動化、そして堅牢なセキュリティとガバナンス機能により、企業のDX推進やビジネスアジリティ向上に不可欠な存在となっています。
MuleSoft、Boomi、Workato、Zapierといったグローバルベンダーに加え、Yoom、BizteX Connectのような国産ベンダーも、日本市場のニーズに合わせたサービスを提供しています。選定にあたっては、自社の連携したいシステム、必要な機能、予算、運用体制、そして日本語サポートの有無などを総合的に比較検討することが重要です。
また、iPaaS導入を成功させるためには、まず解決したい具体的な課題を特定し、小規模なPoCで効果を検証した上で段階的に導入を進めることが推奨されます。IT部門とビジネス部門が連携し、明確なKPIを設定して効果測定を行うことも成功の鍵となります。
2025年以降、iPaaSはAI連携によるインテリジェント化、イベント駆動への対応、そしてComposable Architectureの中核としての役割など、さらなる進化を遂げていくでしょう。これらの最新トレンドを把握し、iPaaSを最大限に活用することで、企業は変化に強く、より高い競争力を持つことができるはずです。
もし、あなたがシステム間のデータ連携や業務自動化に課題を感じているなら、ぜひこの機会にiPaaSの導入を本格的に検討してみてください。