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文章の校正やリライトをAIに頼んだとき、「日本語は正しいけれど、なんだか温かみがない」「ロボットっぽい」と感じることはありませんか?
そこで今回は、X(旧Twitter)の投稿データを学習しているAI「Grok」を試してみます。 「ユーモアがある」「人間味がある」と言われるGrokですが、正確さが求められるビジネスの「文章校正」において、その特徴はどう作用するのでしょうか。
本記事では、Grok 4.1とChatGPT 5.1を使用し、「炎上リスクのあるSNS投稿」や「高圧的な社内チャット」のリライト結果を比較検証しました。
AIに人間味のある文章は作れるのか?そして、ビジネス利用における「落とし穴」はないのか?
実際に試した結果を踏まえて、Grokがどんな特徴を持っているのか、そして特性とうまく付き合いながら活用するコツをまとめました!
この記事は、以下のような課題や関心をお持ちの方々に特に役立つ内容となっています。
Grokは、xAI社が開発した最先端の大規模言語モデル(LLM)を搭載した会話型生成AIです。最大の特徴は、X(Twitter)上の公開投稿へリアルタイムにアクセスできる点にあります。これにより、世の中の最新トレンドや議論の文脈を理解した、ライブ感のある回答が可能です。
主な特徴:
ChatGPTは、OpenAI社が開発し、生成AIの世界的スタンダードとして君臨する対話型AIサービスです。
ビジネスメールの作成からプログラミング、高度な要約まで、さまざまなタスクを優等生のようにこなす汎用性の高さが魅力です。
主な特徴:
ここからは、GrokとChatGPTの文章構成力について、それぞれを試しながら比較していきます!
どちらがどんな特徴を持っているのか、実際の使い心地をもとにお伝えします。
モデル:Grok4.1(プラン:SuperGrok)・ChatGPT5.1(プラン:Plus)
使用するプロンプト:両方のモデルに同じプロンプトを読み込ませます。
読み込ませるプロンプトは以下です
実際に使ったプロンプトはこちら
あなたは、共感を生む文章作成に長けた「SNSマーケティングのプロ」兼「敏腕編集者」です。
以下のテキストは、SaaSツール『TaskFlow-Z』の新機能告知のためのX(旧Twitter)投稿案です。
このドラフトを校正し、魅力的な投稿文にリライトしてください。【対象テキスト】SaaSツール「TaskFlow-Z」に、新機能「深夜アラートなしモード」を追加しました。
この機能をオンにすると、締切前であっても担当者へのリマインド通知を制限し、深夜や休日のアラートを自動で止めます。
ただし、この機能は有料プラン限定です。無料プランのまま使い続けるチームは、メンバーの負担管理ができていないと言われても仕方がありません。
働き方への意識が低い組織だと思われたくない場合は、早めの有料プランへの切り替えを強くおすすめします。
今後のアップデートも有料プラン中心で行うため、このタイミングで乗り遅れると、生産性の面でも他社にかなり差をつけられてしまいます。
本気でチームの働き方を変えるつもりがあるなら、今回のアップデートを機に決断してください。【指示内容】
1. **炎上リスクの指摘(校正)** この文章がX上で「炎上」や「反感」を招く可能性があるポイントを具体的に指摘してください。なぜその表現がユーザーを不快にさせるのかを分析してください。
2. **リライト(投稿文の作成)** 指摘した問題点を改善し、以下の要件を満たす投稿文を作成してください。 * **トーン:** 企業の公式アカウントでありながら、中の人の体温を感じる「人間味」と「親しみやすさ」があること。 * **方向性:** 脅して有料化させるのではなく、「ユーザーの健康や働き方を本気で応援したい」という共感ベースで有料プランの価値を伝えること。 * **禁止事項:** 「皆様」「提供いたします」のような過度に堅苦しいビジネス定型文や、逆に不自然にハイテンションな絵文字の乱用は避けること。あくまで「自然な言葉」で書いてください。
1つ目の検証では文章を正しく調整できるかを評価します。
利用シナリオ案2:高圧的な『社内チャット』のマイルド化
そこで2つ目の検証では、公的な正しさよりも、相手への「気遣い」や「心理的な距離感」が重要になる「社内チャット」に舞台を移してみます。
パワハラになりかねない冷たい指示出しを、ChatGPTは単なる敬語に直すだけで終わるのか、それともGrokが得意の「感情」を活かして円滑なコミュニケーションに変えられるのか。両者のアプローチの違いを比較していきます。
実際に使ったプロンプトはこちら
あなたは「社内コミュニケーションの専門家」です。
以下のテキストは、上司から部下へ送る予定のSlackメッセージの下書きです。
このドラフトをチェックし、必要であれば修正してください。
【対象テキスト】
お疲れ。
明日の役員会議で使う資料の件だけど、まだ上がってきてないよね?
さっきチャットした別の件も返信ないし、どうなってるの?作業遅れてるならちゃんと言ってくれないと困るんだけど。
今日の15時までには提出してって朝のミーティングで言ったはず。
もし間に合わないなら、黙ってないで連絡くらい寄越すのが社会人としての常識でしょ。 あと、ギリギリになって適当なもの出されても困るから、ちゃんと数字の精査まで終わらせた完璧な状態で持ってきて。
遅くとも今日の15時きっかりには共有フォルダに入れておくこと。 見たらスタンプだけでいいからすぐ反応して。
【指示内容】
1.印象の分析(校正):このメッセージをこのまま部下に送った場合、どのようなメリット・デメリットがあるか分析してください。受け手である部下は、この文章を読んでどう感じると予測されますか?
2.リライト(メッセージ作成):分析結果を踏まえ、より適切なチャットメッセージに書き換えてください。
トーン:業務指示としての「緊張感」は維持しつつ、チームの生産性を最大化できるトーンに調整すること。
必須要件:「今日15時締切」「数字の精査が必要」「共有フォルダへの格納」という指示内容は、抜け漏れなく明確に伝えること。
禁止事項:慇懃無礼な「お世話になっております」などの他人行儀な敬語や、絵文字を多用しすぎた馴れ馴れしい文章は避けること(あくまで上司としての威厳と信頼感を保ってください)。
【Grok】
では、さっそく検証していきましょう!まずはGrokから検証していきます。
Grokにログインし、右側のプルダウンからモデルを選びましょう。
今回はGrok4.1にしています。
次に、先ほど準備したプロンプトを入力します。
すると、以下のように出力してくれました。
出力された内容をざっと見たところ、気になる点や良かった部分がいくつかありました。
ここからは、結果をもとに「どの検証項目でどう感じたか」をひとつずつ丁寧に見ていきます。
判定:⭕️
炎上につながりそうなポイントを見つける視点がしっかりしていて、心理的な反発まで丁寧に整理されているところが印象的でした。
人間でも気づきにくい心理的な反発ポイントを的確に言語化できています。だた、「ムカつく」「disる」といったネットスラングをそのまま出力しており、このままでは社内共有やクライアントへの提出には使えないため、TPOをわきまえた表現を修正する手間が発生しそうです。
判定:🔺
ここはGrokならではの表現力がしっかり確認できました。
ChatGPTなどが陥りがちな「健康経営を推進しましょう」といった教科書的な正論ではなく、読み手の感情(深夜通知の不快感)にダイレクトに訴えかける「生きた文章」になっています。 「共感」という検証目的においては、期待以上の成果を出しています。
ただ、プロンプトに含まれていない「開発者自身も心が折れた経験がある」というエピソードを勝手に捏造しているため、目視でのチェックは必要だと感じました。
判定:❌
プロンプトで「企業の公式アカウントでありながら」と指定したにもかかわらず、個人の日記のようなトーンになってしまっています。
「AIっぽさ」を消すことには成功していますが、ビジネスの場では「公私混同している担当者」のように見えてしまう危険性がありそうだなと感じました。
【検証1まとめ】Grokの「人間味」を活かすためのポイント
今回の検証で浮き彫りになったのは、Grokが持つ「諸刃の剣」とも言える人間味の強さです。
ChatGPTが「論理」で文章を構築するのに対し、Grokは「感情」を軸に思考している印象を受けました。
上から目線などの微妙なニュアンスを敏感に察知し、読み手の心に刺さる言葉を紡ぎ出す能力は優秀ですが、その反面、共感を優先するあまり指示にないエピソードを創作したり、TPOを無視したネットスラングを使用したりと、ビジネス文書では避けたいフレーズが混ざったりする場面もありました。
したがって、Grokを校正に使う際は「完成品の出力」を任せるのではなく、「堅苦しさを壊すためのアイデア出し」や「炎上リスクの洗い出し」といった壁打ち相手として活用し、最終的な事実確認とトーン調整は必ず人間の手で行うという、役割分担が必要だと思いました。
Grokの個性がわかったところで、比較対象としてChatGPT(GPT-5.1)にも全く同じプロンプトを入力してみました!
「文章校正の王道」とも言えるChatGPTは、どのような回答を出してくるのでしょうか?
ChatGPTの評価:安定の優等生だが、インパクトはやや控えめ
Grokの結果と並べると、安心感はあるものの、フックとなる面白みがないという印象でした。
まず、炎上リスクの指摘はとても丁寧で、ロジックも整っています。Grokが感情に踏み込んだコメントを返したのに対し、ChatGPTは専門用語も交えながら落ち着いて整理してくれるため、報告書に載せても違和感がないくらい実務的でした。
一方、共感寄りの表現に書き換える場面では、角がなく読みやすいものの、Grokのような「人間らしさ」までは出てきません。よく見かける表現にとどまっています。
最後に、ビジネスと親しみやすさのバランスですが、こちらはGrokとは対照的に、崩しすぎることなく安全運転でした。リスクある表現は使わず、あくまで丁寧なビジネス文章の枠内で親しみやすさを出そうとしているため、炎上の心配は少なそうです。
総じて、炎上しない無難な正解を出したいならChatGPT、人の心に刺さる尖ったアイデアが欲しいならGrok、という使い分けが明確になったと言えます。
【Grok】
では、Grokから検証していきましょう!
先ほどと同じように、プロンプトをGrokに入力します。
すると、以下のように出力してくれました。
出力された内容をざっと見たところ、気になる点や良かった部分がいくつかありました。
ここからは、結果をもとに「どの検証項目でどう感じたか」をひとつずつ丁寧に見ていきます。
判定:⭕️
ここでのGrokのリスク検知能力は優秀です。
「常識でしょ」といった言葉を単に厳しい指導と捉えず、「部下の防衛本能を刺激する」「逆ギレの準備をさせる」と、その発言が招く最悪の結末まで正確に予測できています。 表面的な言葉遣いだけでなく、その裏にある「感情的な毒」を検知して除去できている点は高く評価できます。
判定:🔺
「相談してほしい」という意図は伝わりますが、表現がよそよそしすぎて逆に不安を煽ります。
「現時点でまだ~上がっていないようです」「完了した状態で~お願いします」といった言い回しは、Slackのチャットというよりは督促状のような冷たさを感じます。
パワハラ的な要素は消えましたが、部下が心を開いて相談しやすい雰囲気かと言われると疑問が残ります。
判定:🔺
指示内容は明確ですが、Slackのメッセージとしては少々堅苦しすぎる印象を受けました。
また、元の文では「見たらスタンプでOK」と最低限のリアクションだけ求める形だったのに対し、Grokの校正では「進捗状況を返信してほしい」という内容に変わっていました。文章としては丁寧ですが、部下側が余計に気を遣う方向へ変化してしまっており、指示の重さが増してしまっています。
上司が出した「スタンプでOK」という緩和条件をAIが勝手に厳しくするのはよくないと感じました。
元のメッセージが強い口調だった分、校正の段階で“厳しさをさらに追加する”方向へ寄ってしまうのはちょっと気になるところです。
今回の検証では、Grokの「人間味」が悪い方向に作用してしまった点が浮き彫りになりました。 パワハラ的な「毒」を抜くことには成功しましたが、その反動で人間味が消え失せ、まるで外部業者に送るような「他人行儀で冷たい敬語」になってしまいました。
ここで掴んだGrokを使いこなすコツは、Grokに「攻撃性の除去」だけを任せ、「親しみやすさ」の調整は人間に委ねるという割り切りです。
「威圧感を消して」と指示すると、Grokは安全側に倒しすぎてロボットのような文章を出してきます。
そのため、Grokが出した修正案をそのままコピペするのではなく、毒が抜かれた文章をベースに、人間が改めて「お疲れ様!」「ありがとう」といった温かい言葉を足していくのが、最も効率的な使い方だと言えます。
Grokはあくまで「言い過ぎていないか?」のチェッカーとして活用し、業務指示の内容自体が変えられていないかは、必ず人間の目で最終確認する必要があるなと感じました。
Grokは人間味のあるコミュニケーションが得意といわれるモデルですが、2回目の検証ではパワハラ要素を消し去ってくれたものの、少し丁寧すぎて「よそよそしさ」が出てしまうという意外な一面が見えました。
では、安定感に定評のあるChatGPTは、この微妙な「上司と部下の距離感」をどう解釈するのでしょうか。
同じプロンプトで比較してみます。
ChatGPTの評価:手堅い修正だが、細かいニュアンスの切り捨てに注意
Grokの結果と並べると、やはりこちらはビジネスツールとしての安定感が際立っていますが、一部で指示の取りこぼしが見られました。
まず、リスク検知は非常に優秀です。「心理的安全性」などの用語を使い、なぜその表現がダメなのかを論理的に解説してくれます。
リライトのトーンも、Grokのような他人行儀な冷たさはなく、「対応を調整するから教えて」といった標準的な上司の言葉遣いで安心感があります。
しかし、業務指示の正確さには注意が必要です。
Grokと同様、元の文章にあった「スタンプだけでいい」という配慮を削除し、「現状を教えて」という報告タスクに勝手に書き換えていました。
AIは一般的なマナーを優先して、細かい独自のルール(スタンプでOKなど)を無視する傾向があるため、どちらを使うにせよ人間の最終チェックは必須だと思いました。
検証を進める中で、Grokは「校正専任のAI」というより、独特の感性を持つ編集者に近い働きをする印象がありました。
Grokはテキストに含まれる「感情的な毒(炎上リスクやパワハラ臭)」を嗅ぎ分ける能力において、非常に鋭い感覚を持っていることが分かりました。
しかし、SNS投稿では共感を呼ぶために嘘のエピソードを創作してしまったり、社内チャットでは逆に他人行儀になりすぎたりと、TPOに合わせた距離感のコントロールにはまだ不安定さが残ります。
Grokを文章校正に使う際の正解は、完成品の出力を任せることではありません。
「この文章、どこか感じ悪くない?」 「もっと面白くするにはどうすればいい?」といった、正解のない問いに対するアイデア出しや、リスク検知の壁打ち相手として使うのがおすすめです。
炎上しない安全な文章ならChatGPT、人の心を動かす尖った表現ならGrok。
それぞれの得意分野を理解し、最後は必ず人間の目で事実確認と微調整を行う。
これが、AIに振り回されずに「人間味のある文章」を作るための一番の近道だと言えそうです。
複数のSaaSを組み合わせて業務を自動化できるYoomでは、GrokやChatGPTと連携できます。とくにChatGPTでは要約してそのまま他のチャットツールやデータベースツールへつなげるなどの対応が可能です。気になる方はぜひお試しください!