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市場調査や競合分析など、日々の業務で大量のPDF資料と格闘していませんか?
「読むだけで午前中が終わってしまった」「重要なグラフを見落としていた」といった経験は、多忙なマーケティング担当者や企画職の方なら一度はあるはずです。
以前は、AIを使っても「テキストは読めても、図表やグラフのトレンドまでは読み取れない」という課題がありました。
しかし、生成AIは進化しており、PDF内の画像やグラフも読み込めるようになりました。
そこで、PDFの要約作業に生成AIのClaude(クロード)を導入することを考えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ClaudeがPDFの要約に使えるのかを、実際の業務を想定して検証します。
PDF内の図の理解や長文PDFの処理性能などを評価するので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事は以下のような方におすすめです。
Claudeは、元OpenAIの研究者らによって設立されたAnthropic社が開発した生成AIです。
人間らしい自然な文章生成と高い安全性が特徴とされています。
そんなClaudeをPDFの要約作業で使うときに知っておくべきポイントは、以下の2つになります。
長文処理能力:
200kトークンという大きなコンテキストウィンドウがあります。
日本語で10万文字〜15万文字ほどを処理できるとも言われます。
ただし、入力する情報が多いと、出力できる文字数が減るため、10万文字を超えるような長文の資料を要約する場合は、分割して処理をするなど、工夫が必要です。
また、一度に添付できるファイルは30MB、20ファイルまでです。
プロジェクト機能:
プロジェクトに資料を保存しておけば、保存されているファイル情報をもとにチャットを行うことができます。
例えば、企業ごとにプロジェクトを作成し、関連するPDFなどのファイルを保存しておくことで、複数のファイルを横断的に処理することも可能になります。
ClaudeをPDFの要約作業に使うときに、具体的にどんなことができるのかを簡単にご紹介します。
テキストだけでなく、グラフやチャートが含まれた資料もClaudeなら理解できます。
これまでは文字情報の要約が中心でしたが、Claudeはグラフの右肩上がりの傾向や、円グラフの構成比といった視覚情報も読み取ることが可能です。
「数値の増減」と「その背景にある文脈」を組み合わせて解釈してくれるため、非常に精度の高い要約が手に入ります。
資料と睨めっこする時間を減らし、全体像をパッと把握したい時に、頼れるパートナーとなってくれるはずです。
紙で保存されている古い資料や、会議中に走り書きした手書きメモなど、画像化された文字情報の処理も得意です。
斜めにスキャンされてしまったPDFや、少し癖のある手書き文字であっても、Claudeは高い精度で読み取ってテキストデータに変換してくれます。
「過去の資料を検索できるようにしたい」「手入力での転記作業をなくしたい」という場面で、事務作業を効率化し、デジタル化を強力にサポートしてくれます。
資料の中にバラバラに散らばっている情報を、使いやすい表形式に整理整頓することもできます。
例えば、数100ページのカタログから「製品名」と「価格」だけを抜き出したり、複数の請求書から「日付」と「合計金額」をリスト化したりすることが可能です。
集めたデータはCSVやMarkdown形式で出力できるので、そのままExcelやデータベースに貼り付けて活用できます。
面倒なコピペ作業から解放されたいときに便利な使い方です。
100ページを超えるような分厚いマニュアルや、長大の資料を一度に要約できます。
目視でこれらの要約を行うのは大変な労力が必要です。
Claudeなら膨大なテキスト量を一度に処理できるため、こうした長文資料も難なく読みこなせます。
単に全体を短くするだけでなく、「〇〇に関する記述だけを抽出して」といったピンポイントなリクエストも可能です。
膨大な情報の海から、あなたが今本当に知りたい情報だけを瞬時に見つけ出し、ポイントを効率的に掴むことができます。
専門用語が並ぶ技術仕様書や、独特な言い回しの契約書など、読むだけで疲れてしまう資料もClaudeに任せられます。
難しい内容を専門外の方や新入社員でもスッと理解できるよう、平易な言葉や身近な例え話に変換して解説してくれます。
「中学生にもわかるように教えて」と頼めば、驚くほど噛み砕いた説明をしてくれるため、チーム間での知識格差を埋めたり、難解な文書に対する心理的なハードルを下げたりするのに役立ちます。
それでは、ClaudeでPDFを要約する設定方法を解説します。
今回は、プロジェクト機能は使わず、通常のチャットでの要約を想定して設定方法をご紹介します。
プラン:Pro
環境:ウェブ版
1.アカウントにログイン
2.モデルを選択
ログインすると、チャット画面が表示され、入力欄の右下からモデルを選択できます。
※プロジェクト機能を利用する場合は、メニューから選択可能です。
プロジェクトには、事前情報として「指示」や「ファイル」を設定できるため、同じプロンプトや資料を何度も設定する手間を削減したいときにおすすめです。
3.ファイルの添付と機能の選択
「じっくり考える」(時計マーク)をクリックします。
続いて「+」マークをクリックして、「ファイルまたは写真を追加」を選択し、PDFファイルを添付します。
※「じっくり考える(拡張思考)」機能を利用することで、Claudeが複数の処理プロセスを検証できるようになり、結果の精度を高めることに繋がります。
4.プロンプトを入力して送信
設定が完了したらプロンプトを入力して送信します。
以上が、ClaudeでPDFを要約する手順になります。
🤔ClaudeでPDFを要約する使用例2選
実際にビジネスの現場でClaudeがどれほど通用するのか、具体的なシーンを想定して検証を行いました。
良い結果だけでなく、実際に使ってみて初めてわかった「壁」についても包み隠さずレポートします。
SaaS導入の比較検討において、各社のカタログから機能や料金を拾い出し、比較表を作成する作業は非常に手間がかかります。
この作業をClaudeに代行させ、その実用性を検証しました。
【検証条件】
使用モデル: Sonnet 4.5 / Opus 4.5(Claude Proプラン)
検証内容: SaaS導入検討のため、資料からターゲット・機能・料金を抽出して要約(Sonnet 4.5とOpus 4.5の性能比較)
添付ファイル: サイボウズ社の「サイボウズOffice」製品カタログ(PDF形式、7.2MB、カラー13ページ)を使用させていただきました。
検証ポイント:
検証プロンプト:
あなたは優秀なITコンサルタントです。添付された「サイボウズOffice」のパンフレットを詳細に解析してください。この製品がターゲットとしている企業規模や業種、主な機能(スケジュール、掲示板、ワークフロー等)、およびコースごとの料金体系と制限事項について、Markdown形式で整理して出力してください。特に料金表や機能比較図については、資料内の数値を正確に引用し、記載がない項目は「記載なし」としてください。
※出力が長いため一部を掲載します。
【Sonnet 4.5】
【Opus 4.5】
それぞれの出力を、4つの検証ポイントで比較した結果が以下になります。
高機能な「Opus」と、バランス型の「Sonnet」で比較しましたが、今回の13ページ程度の資料要約においては、出力結果に明確な品質差は見られませんでした。
料金表の数値抽出においても、両モデルともに「数値ミス・機能漏れなし」という完璧な結果を出しています。
処理時間もSonnetが1分48秒、Opusが1分31秒と誤差の範囲です。
リスト形式で情報を整理するようなタスクであれば、日本語の不自然さも見られません。
更新頻度が高いウェブ上の最新情報を調査する場合や、長い文章の出力を求める場合ではモデル差が出ることもあります。
しかし、PDFの要約であればあえてコストの高いOpusを使わずとも、Sonnetで十分です。
Claudeの特徴として、指示以上の「気遣い」を見せることがわかりました。
今回は「ターゲット」「機能」「料金」を指定しましたが、Claudeは頼んでいない「サポート体制」についても資料から読み取り、丁寧に追記しました。
これは網羅的に情報を知りたい場合には大きなメリットですが、「A4・1枚で要点だけまとめて」というシーンでは情報過多になります。
簡潔さを求める場合は、「指定した項目以外は出力しないこと」といった制約条件をプロンプトに加える必要があります。
AIは進化しており、人間のような気遣いもできますが、なんでもAI任せにするのではなく、必要な情報だけ知りたいときは、範囲を明確に定義することがおすすめです。
PDFの要約作業で最も注意すべき点は、ファイル容量です。
Claudeの仕様上は「30MB・20ファイル」となっていますが、実際にはもっとシビアです。
当初、比較表を作成するためにサイボウズ社の4製品のPDF(合計23MB程度)をあわせて添付して検証しようと考えていました。
しかし、容量の上限に余裕があるにもかかわらず、プロンプトを送信すると容量オーバーでエラーになりました。
結局処理できたのは、添付ファイル(サイボウズOffice-7.2MB)が1つのときのみです。
仕様上の上限値と、実際に快適に処理できる容量には乖離があります。
チャットを利用して数MBの重たいPDFを複数読み込ませて横断的に分析する作業には、現時点では不向きと言わざるを得ません。
それでももしClaudeで複数のPDFを同時に処理するなら、プロジェクト機能をおすすめします。
プロジェクト機能であれば、4つの資料を横断的に要約することができました。
次に、膨大なテキスト量を誇る「情報通信白書」を読み込ませ、長文処理能力と他社AI(ChatGPT、Gemini)との比較を行いました。
【検証条件】
使用モデル:
検証内容: 「情報通信白書」を基にした日本のデジタル政策と課題の分析整理(Claude・ChatGPT・Geminiの比較)
添付ファイル:デジタル庁が公開している 「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(PDF形式、140ページ、5.1MB)を利用させていただきました。
検証ポイント:
検証プロンプト:
あなたは専門の政策アナリストです。添付された「令和4年度 情報通信白書」の内容全体を俯瞰し、日本の情報通信分野において今後の方針に大きな影響を与える可能性のある最重要課題を5つ抽出してください。それぞれの課題について、資料内のどの部分に記載されているか根拠(章・節、または図表番号など)を示しながら、100文字程度で論理的に解説してください。もし資料内に具体的な数値データがある場合は、それを含めて説明してください。
【Claude】
【ChatGPT】
【Gemini】
それぞれの出力を、4つの検証ポイントで比較した結果が以下になります。
最も顕著な差が出たのが処理時間です。
GeminiやChatGPTが30秒前後で結果を出力したのに対し、Claudeは4分17秒かかりました。
これはClaudeが長文を深く読み込んでいる証拠でもありますが、業務中に「サクッと要約して」と頼むにはストレスを感じる待ち時間です。
今回の検証結果から、スピード重視のタスクならGemini、時間はかかっても深読みさせたいならClaudeという明確な使い分けが必要であることがわかりました。
「100文字程度で」という指示に対し、Geminiは113〜119文字と完璧に近い精度で調整しました。
一方、Claudeは166〜187文字と、やや丁寧に書きすぎる傾向があります。
ただし、内容は非常に正確で、根拠となる章番号も指示通り出力されています。
ChatGPTは82〜128文字と短くまとめましたが、指示した「根拠(章番号)」が一つも記載されておらず、また最初は英語で出力されるなどの不安定さが見られました。
形式を厳密に守るならGemini、内容は正確だが少し長くなるのがClaude、という結果です。
ChatGPTが特定の章(5章・6章)に偏った回答をしたのに対し、ClaudeとGeminiは資料全域(2章・5章・6章)からバランスよく重要課題を抽出しました。
特にClaudeは、時間はかかったものの、情報の抽出漏れやハルシネーション(嘘の回答)がなく、ビジネス文書としてそのまま使える落ち着いたトーンで出力されました。
頻繁にPDFを要約するシーンではGemini一択と言えますが、ワンポイントで「読み間違えてほしくない重要な契約書や資料」を要約する場合であれば、Claudeも選択肢の1つになります。
今回の検証から、ClaudeのPDF要約は「スピードや容量には課題があるものの、内容の正確性と文脈理解力は非常に高い」ことがわかりました。
特に、カタログ要約や長文内容の要約などをワンポイントで要約する時に「優秀なアシスタント」となってくれます。
一方で、高い頻度でPDFを要約する作業には、Geminiなどの他ツールが適しています。
▼検証結果まとめ:PDF要約におけるClaudeの特徴
PDF要約で得た情報は、ただ読んで終わりではありません。
Yoomを活用すれば、この要約プロセス自体を業務フローに組み込み、完全に自動化することが可能です。
例えば、以下のようなフローがノーコードで実現できます。
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[Yoomとは]
【出典】
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