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新規事業の立ち上げやマーケティングリサーチを進める中で、「できるだけ信頼性の高い情報を使いたい」と感じることは多いのではないでしょうか。
しかし、自分でGoogle ScholarやPubMedで論文を探して英文を読み込み、内容を整理してチームに共有するとなると思った以上に時間がかかってしまいますよね。
そんなリサーチの負担を軽くしてくれるのが、AI検索ツールの「Perplexity」です。
Perplexityは従来の検索エンジンとは異なり、質問を投げかけるだけで、知りたい情報を会話形式で整理して提示し、その根拠となる論文ソースもあわせて確認できるのが特徴です。
本記事では、Perplexityのフォーカス機能を使った基本的な論文検索の方法から、調べた内容を効率よく要約する方法までをわかりやすくご紹介!また類似ツールであるElicitとも比べてみました。
ここでは、本記事がどんな方のお役に立つのか、またPerplexityを使ううえで知っておきたいポイントを簡単に整理します。
本記事は、次のようなお悩みや関心をお持ちの方に向けた内容です。
Perplexityは、従来の検索エンジンと生成AI(LLM)を組み合わせた対話型AI検索エンジンです。
キーワードを並べて検索するのではなく、普段使っている言葉で質問するだけで、AIがその意図をくみ取りながらWeb上の情報を調べて回答をまとめてくれます。
Perplexityの特徴のひとつは、回答の根拠となる情報源(出典)が明示される点です。
どの論文や記事をもとに回答が作られているのかを確認できるため、内容の裏取りがしやすくなります。
そのため、AIの回答をそのまま鵜呑みにするのではなく、「本当に正しい情報か」を確認しながら進めたい論文リサーチや技術調査との相性が良いツールだといえます。
今回使用するPerplexityのフォーカス機能の基本情報は、以下のとおりです。
ここでは、実際に論文リサーチの現場で役立つPerplexityの機能を、特に利用シーンの多いポイントに絞ってご紹介します。
フォーカス機能を「学術」に設定することで、検索対象を学術論文や専門誌に限定できます。
ブログ記事やSNS、広告的なコンテンツが表示されにくくなるため、「まずは信頼できる論文だけを確認したい」という場面に便利です。
Google検索のように大量の情報から取捨選択する必要がなく、最初から論文ベースで調べられるので、リサーチのスタート地点をシンプルにできます。
英語論文のPDFをアップロードしたり、論文のURLを指定したりするだけで、その内容を日本語で要約できます。
「この論文の結論は何か」「どんな手法が使われているのか」など、知りたいポイントを指定して要約させることも可能です。
全文を読み込む前に概要を把握できるため、読むべき論文・読む必要のない論文を判断しやすくなります。
ひとつの質問に対して、AIが「次はこの観点で調べると良い」という関連質問を提案してくれます。これは、「次に調べるなら、こういう切り口もありますよ」とAIがヒントを出してくれるイメージです。
自分ひとりで調べていると見落としがちな視点や、周辺分野の重要な論文に気づけることもあり、リサーチの幅を自然に広げられます。
Perplexityは、回答の各主張に対してどの論文・どの資料にもとづいているかを明示した形で提示してくれます。
「この主張はどの論文が根拠か」「比較的新しい研究かどうか」といった点をリンク付きでひと目で確認できるのが特徴です。
あとで引用元を探し直す手間も減らせるため、作業効率を高められます。
ここでは、実際にPerplexityをビジネスや研究の現場でどう活用できるか、具体的なシナリオをもとに論文検索機能の使い方を解説します。
はじめに今回の検証で使用するPerplexityとElicitのアカウントを用意します。
今回はどちらもブラウザ版で登録します。
1.Perplexity(https://www.perplexity.ai/)にアクセスします。
2.アカウントを作成します。
今回はGoogleアカウントを使います。
3.登録するGoogleアカウントを選択します。
4.アクセス許可の画面が表示されたら、「次へ」をクリックします。
5.チャット画面が表示されたら、完了です!
1.Elicit(https://elicit.com/)にアクセスします。
2.「Try now」をクリックします。
3.アカウントを登録します。
ここでは例として、Googleアカウントを使います。
4.Perplexityと同様の手順でGoogleアカウントを登録します。
5.名前を入力します。
プランの選択が求められますが、今回は無料版で検証するため、画面右下の「Skip」をクリックします。
6.以下の画面が表示されたら、完了です!
まず、Perplexityを開き、検索窓にある「フォーカス」ボタンをクリックします。
ここで「学術」を選択してください。
これにより、検索対象が論文や学術出版物に限定され、精度の高い情報収集が可能になります。
検索窓に調査したいテーマやプロンプトを入力し、送信します。
Perplexityが関連する論文を探し出し、要約と共に出典リンクを提示してくれます。
Perplexityの論文検索機能の検証条件と検証シナリオを紹介します。
今回行う検証のシナリオと確認項目をまとめます。
■想定されるユースケース
福利厚生施策として「スタンディングデスクの導入効果」を裏付ける論文を探す
■検証条件
Perplexity(無料版・通常検索)とElicit(無料版)
■検証項目
■想定されるユースケース
新しいスマホを購入した際、急速充電を毎日使うことの是非を技術的なエビデンスに基づいて判断したい場合
■検証条件
Perplexity(無料版・通常検索)とPerplexity(無料版・Pro Search)
■検証項目
プロンプト
あなたはエビデンスベースで意思決定を支援するリサーチアシスタントです。
学術論文・技術レポートなどをもとに、専門知識がない一般ユーザーが意思決定できるレベルでまとめてください。
【調査テーマ】
スタンディングデスクの使用が、知的労働者の「集中力」「生産性」「認知パフォーマンス」に与える影響
【調査条件】
1. 最新の科学的根拠を重視すること - 可能な限り過去5年以内の査読付き研究・レビューを優先 - 過去5年より前の重要研究(高引用・メタ分析)は文脈評価として含める
2. 査読付き学術論文を中心に調査すること
3. システマティックレビュー、メタ分析、ランダム化比較試験(RCT)を優先
4. 肯定的な結果だけでなく、効果が限定的・否定的な結果も含める
5. 座位作業との比較研究を重視する
【出力形式】
1. 結論の要約(福利厚生施策の判断に使える形で簡潔に)
2. 科学的エビデンスの整理 - 効果が支持されている点(最新研究中心) - 効果が限定的・否定的とされている点
3. 主要な論文一覧 - 著者名 - 発表年 - 掲載誌 - 研究デザイン - 研究の信頼性・限界
4. 本テーマにおける研究上の限界や注意点
【利用目的】
企業の福利厚生施策として、スタンディングデスク導入の妥当性を検証するため
フォーカスが「学術」であることを確認し、実際にプロンプトを実行してみます!
すると、2〜3秒で回答が表示されました。
第一印象としては、指示した出力形式で簡潔にまとめられており、内容が把握しやすいと感じました。
さらに、各項目に出典元とURLが添えられているので、情報の正確性を確認しやすい点も便利です。
チャット画面左側のメニュー「ツール」から「論文を探す」を選択します。
出典は、以下2つから選択可能です。
無料プランでは「研究論文」のみ使えるので、そのままでOKです。
では、実際にプロンプトを実行します!画面右側に回答が表示されます。
第一印象としては、結論が太字で書かれていてわかりやすいです。UIやレイアウトも整っていて読みやすいと感じました。
出典も示されていますが、一部は明記されておらず事実確認ができませんでした。
判定:◯
PerplexityとElicitともに箇条書きではなく、テーマ全体をまとめた文章として回答が返ってきました。
ただし、出力形式の再現性には差がありました。
Perplexityは、事前に指定した以下の構成を守って回答しています。
一方、Elicitは独自の構成で返ってきました。
内容は整理されていますが、フォーマット指定を厳密に守らせたい用途にはやや不向きだと感じました。
ただ、重要なポイントとして、両者の結論は完全に一致しています。
いずれも「福利厚生施策としての導入は妥当だが、生産性やパフォーマンスへの効果は限定的」と明言しており、意思決定の方向性は揃っていました。
判定:◯
PerplexityとElicitともに、参照元は学術論文のみでした。
特に優れていたのがElicitです。
画面左側にテーマに合致した論文一覧が表示され、タイトルと要約をひと目で確認できます。
気になる論文はタイトルをクリックして、「ソース」を選ぶと開けるため、参照元の確認スピードが速いです。
さらに、以下の条件でフィルターをかけられ、並べ替えや検索も可能です。
論文を探す・絞る・読むという一連の作業がストレスなく進みます。
判定:◯
PerplexityとElicitともに、回答で引用した論文は英語圏の研究が中心でした。
加えてElicitでは、検索結果一覧を見ると、日本や中華圏の論文も表示されていました。読者自身が確認したい論文を選べる選択肢が多く、調査の自由度という点でも好印象でした。
結論として、無料プランの範囲で論文ベースの調査を行うなら、総合力はElicitのほうが上です。
特に評価できるのは、以下の3点です。
自分でひとつずつ探すよりも、論文調査にかかる時間を短縮できます。
一方で、今回の失敗点もはっきりしました。
Elicitで指定した出力形式どおりに回答されなかった原因は、プロンプトの書き方にありました。
「必ずここで示した出力形式で回答してください。」という一文を追加すると、指定どおりの構成で回答が返ってきました。
また注意点として、ElicitはEnterキーを押すとそのまま送信されます。
途中で送信してしまうリスクを避けるため、メモ帳などでプロンプトを作成し、コピー&ペーストで使う方法がおすすめです。
次は、Perplexityの通常検索とPro Searchで情報密度の比較を行うための検証を実施します。
はじめに、通常検索とPro Searchの機能の違いを以下にまとめます。
プロンプト
あなたは電池工学・モバイルデバイス技術に精通したリサーチアナリストです。
学術論文・技術レポート・メーカー公式資料をもとに、専門知識がない一般ユーザーが、新しいスマートフォンで急速充電を常用すべきか判断できるレベルでまとめてください。
【調査テーマ】
スマートフォンにおいて急速充電(例:20W以上)を毎日使用した場合、リチウムイオンバッテリーの劣化や寿命にどのような影響があるのかを調査してください。
【調査条件】
1. できる限り最新の(過去3年以内の)研究論文を優先して参照すること — 補足として2020年以降の研究論文・技術レポート・メーカー公式資料の参照は可とする
2. 通常充電と比較した場合の影響を、以下のような定量的指標を用いて説明すること
充電サイクル数
バッテリー容量の低下率
充電時の温度上昇や電圧条件
3. 劣化が進む主な技術的要因(発熱、電圧、充電制御アルゴリズムなど)を簡潔に解説すること
4. 「毎日急速充電しても実用上問題ないか」という観点で結論をまとめること
5. 不確実性や研究間で見解がわかれている点があれば明示すること
6. 参照した情報源(論文タイトル・著者・発表年など)がわかる形で明示すること
【出力形式】
1. 結論の要約(専門知識がない一般ユーザー向けに簡潔に)
2.技術的背景(劣化メカニズムの説明)
3.通常充電との比較(定量的な違い)
4.研究結果の整理(共通点・相違点)
5.実用上の判断(一般ユーザー向けの結論)
6.参考文献・情報源一覧
文章主体で、専門用語には簡単な補足説明を付けること。
【利用目的】
新しく購入したスマートフォンにおいて、急速充電を毎日使用するべきかどうかを感覚や噂ではなく技術的エビデンスにもとづいて判断するため。
まず、Pro Searchがオフであることを確認します。
検索のフォーカスを「学術」に設定し、プロンプトを入力して送信します!すると、10秒ほどで回答が届きました。
第一印象は、簡潔で読みやすいということです。
たとえば、通常充電と急速充電の違いが表形式でまとめられていて、ぱっと見で比較できるのが便利です。
結論も一般ユーザー向けにわかりやすくまとめられて、判断材料として活用できそうです!
まず、Pro Searchをオンに切り替えます。
次に、検索のフォーカスが「学術」になっていることを確認し、プロンプトを入力して送信します!
40秒ほど待つと、回答が返ってきました。
第一印象としては、通常の検索よりも詳しい内容になっています。
専門的な用語(例えば P ≈ I²R)や具体的な計算式まで載っていて、研究や学習に役立つ情報だと感じました。
判定:◯
通常検索とPro Searchのいずれでも「急速充電を毎日しても、2〜3年程度の利用期間であれば問題なく耐えられる」という共通の結論を導き出せていました。
通常検索で出力された結論は、以下です。
Pro Searchで出された結論は、以下です。
特に親切だと感じたのは、Pro Searchです。
急速充電を避けたほうが良いケースや通常充電と急速充電との使い分けという一歩先の行動まで提示されていました。単なる調査結果の要約ではなく、一般ユーザーが判断に使える形に落とし込まれている点が、通常検索との大きな違いです。
判定:◯
Pro Searchのほうが「どの程度の出力(W数)なら実用上安全か」を仕組みベースでしっかり深掘りできています。
通常検索は「20W以上でも大丈夫」「寿命は少し短くなる可能性がある」といった表現に留まり、「なぜそういえるのか」「どこからが危険域なのか」という疑問には踏み込めていません。
一方、Pro Searchは20W前後が実用上安全とされる理由を、充電サイクル数と容量低下率、温度、電圧条件・上限SOCの観点から仕組みベースで説明しています。
さまざまな観点でまとめているのが、Pro Searchにおける深掘りの価値といえます。
判定:◯
Pro Searchは通常検索よりも詳細なデータまで述べられています。
通常検索は結論を素早く把握するには便利ですが、数値や条件は抽象化されています。
結果として、20W以上でも問題ない根拠や急速充電だとバッテリーが劣化しやすい要因などがわかりにくい印象です。
一方Pro Searchでは、なぜ急速充電が劣化しやすいのか、急速充電を毎日しても、2〜3年程度の利用期間であれば問題なく耐えられる理由などが詳細なデータを用いて説明されています。
さらに、評価できるのは、論文間で見解がわかれている点や、まだ不確実な部分についても触れている点です。「こういう条件では差が出やすい」「ここは研究結果が割れている」と示すことで、読み手は情報を過信せず、自分の使い方に当てはめて判断できます。
学生や研究者はもちろん、一般ユーザーにとっても、「数字があるから理解できる」「判断材料として使える」と感じられる内容になっており、情報の密度という点でPro Searchの強みがはっきり表れています。
今回の検証でわかったことは、通常検索とPro Searchでは向いている用途が違うという点です。
通常検索は、「急速充電を毎日使っても大丈夫か」という結論を素早く確認したい場面に適しています。「2〜3年程度なら実用上問題ない」という要点だけを把握する用途であれば、これで十分です。
一方、Pro Searchはさらに深掘りしたい方に向いています。
単に「大丈夫」と言い切るだけでなく、20W前後が実用上安全とされる理由や、バッテリー温度が40℃を超える状態が劣化を早めるといった具体的な条件まで踏み込んでいます。
そのうえで、通常充電と急速充電の使い分けや、バッテリー寿命を延ばすための行動指針まで提示されていました。
結論だけでなく、「次に何をすればいいか」まで知りたい方にとって、Pro Searchは効果的です。
今回の検証で失敗だったと感じたのは、プロンプト設計です。
「専門知識がない一般ユーザーが、新しいスマートフォンで急速充電を常用すべきか判断できるレベルでまとめてください」という指示は、一見すると十分に見えます。
しかし実際には、温度制御やCレート、電圧といった技術的背景や通常充電と急速充電の定量的な違いは、前提知識がないと理解しづらい部分が残りました。
もし研究者や技術者の立場であれば、「リチウムイオン電池の劣化要因を論文ベースで整理する」「20W、30W、45Wといった出力別の劣化傾向を比較する」といった役割をAIに明確に与えたほうが、より専門的で精度の高い情報が引き出せます。
目的と読み手のレベルをどこに置くか次第で、得られる情報の質は大きく変わることを今回の検証で実感しました。
今回は、Perplexityを活用して、論文・レポート作成の効率化を実際に試してみました。
Perplexityは質問を投げかけるだけで、関連する学術論文を自動で検索・要約し、出典付きで整理してくれるため、「この情報、本当に信頼できる?」という不安を減らせることがわかりました。
また、通常検索とPro Searchを使い分けることで、概要把握から専門的な深掘りまで目的に応じた情報収集が可能です。
Elicitは論文リストが一覧で見やすく、フィルターで絞り込みも簡単なので、調査作業を効率よく進められます。
PerplexityとElicitのいずれも日本語の質問に対して英語圏の論文も参照でき、リサーチ時間を短縮できます。
結論として、以下の使い分けがおすすめです。
リサーチや資料作りで時間を取られがちな方は、ぜひ目的に合わせて両方のツールを使い分けてみてくださいね。
Yoomは、さまざまなAIやSaaSツールをノーコードで連携できるサービスです。
PerplexityとGoogle Drive、Slack、ChatGPTなどと連携すれば、Web検索やブログ作成、要約などを自動化できます。
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