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2025年11月18日、xAIから「Grok 4.1」がリリースされ、Grokシリーズの選択肢がさらに広がりました。
しかし、既存のGrok 3やGrok 4を含め、それぞれのモデルにどのような違いがあるのか、イマイチ分かりにくいのが正直なところではないでしょうか。
「日本語の自然さはどうなのか?」「ビジネスメールやアイデア出しで、信頼して使えるレベルなのか?」といった、現場レベルでの疑問は尽きません。
そこで本記事では、Grok 4.1を含む、歴代Grokシリーズ3モデルを徹底比較!
単なるスペックの比較だけでなく、実際に「キャッチコピー作成」や「クレーム対応メール」といった実務を任せてみて、その実力を検証してみました。
それぞれのモデルの「得意・不得意」や「性格の違い」を知ることで、Grokを日々の業務にどう活かせばいいのか、そのヒントがきっと見つかるはずです。
自分にしっくりくるモデルを見つけるヒントとして、ぜひ参考にしてみてくださいね!
✍️Grokについて
本記事の想定読者
歴代Grokモデル、それぞれの特徴
まずは、今回比較する3つのGrokモデルについて、基本的な特徴と進化したポイントを見ていきましょう。 Grok 4.1
2025年11月18日に公開されたGrok 4.1は、従来モデルのGrok 4が持っていた “考える力” を引き継ぎつつ、会話の自然さがより扱いやすく調整されています。
やり取りの中で空気感や意図を読み取りやすくなり、機械的な返答が減ったことが特徴です。
文章作成の精度も上がっていて、短時間のプロンプト入力でも、自然で読みやすい文を形にしてくれます。
また、AIが事実と異なる内容を返してしまうハルシネーションも抑えられており、業務での利用もしやすくなりました。
加えて、Grok 4.1は誰でも無料で利用できるため、業務のちょっとした補助からアイデア出しまで幅広く役立つモデルとして取り入れやすい存在になっています。
Grok 4
2025年7月に登場し、Grokの「性能」を大幅に強化したモデルです。 一度に処理できる情報量(コンテキストウィンドウ)がGrok 3から倍増し、256,000トークンという大容量を実現しました。
さらに、Grok 3では対応していなかった画像の読み取り(マルチモーダル)にも対応。
特に数学やプログラミング、複雑な論理的タスクで高いパフォーマンスを発揮します。
Grok 4.1が登場した現在も、正確性や論理性が求められる場面で活躍するかもしれませんね。
Grok 3
2025年2月に登場した、Grokの高性能な基盤を築いたモデルです。
現在は「レガシー(旧モデル)」という位置づけですが、発表当時は、GPT-4やClaude 3 OpusといったトップクラスのAIに匹敵する性能を示していました。
Grok 4以降のモデルと異なり、テキスト処理に特化しています。
一度に処理できる情報量も132,000トークンと十分で、現在のGrokの高性能さの礎となったモデルと言えるでしょう。
Grok 歴代モデル スペック比較表 (2025年11月18日時点)
Grokの歴代モデルの機能の違いを一覧にまとめてみました!
ご自身の用途と照らし合わせてみてください。
🤔Grok4.1、Grok 4、Grok 3を実際に比較してみた!
ここからはGrok 4.1、Grok 4、Grok 3の性能について、実際のビジネスシーンをもとに検証していきます!
検証内容とポイント
検証するアウトプット:今回は、「新商品のキャッチコピー作成」と「感情的なクレームメールへの返信」。
特に、Grok 4.1の強みである「創造性」や「協調性」、そして「共感力」が問われる2パターンで、各AIの実力を検証します。
検証内容:Grok 4.1、Grok 4、Grok 3に対し、それぞれ全く同じ指示(プロンプト)を与え、出力された結果を比較します。
今回は、単なる文章の正しさだけでなく、以下の観点から「ビジネスでの実用性」を主にチェックしていきます!
検証項目:
これらの項目をもとに、各モデルの「性格の違い」や「得意なシーン」を整理していきます。
検証①:キャッチコピーとSNS投稿文の作成
まずは、Grok 4.1の「創造性」と「協調性」を試すテストです。
マーケティング担当者になったつもりで、新商品のアイデア出しを依頼してみます。
今までのGrok 4やGrok 3の回答と、Grok 4.1の回答に差は出るでしょうか。
※2025年11月18日現在、Grok 4.1は全ユーザーに無料開放されています。
一方、Grok 4とGrok 3は旧モデルとなり、無料ユーザーは選択できなくなりました。
今回は、これら3モデルすべてにアクセスできる環境を前提として比較テストを行います。
検証方法:各モデルに、以下の共通プロンプトを入力します。
プロンプトは以下のように入力します。
あなたは敏腕マーケターです。
以下の条件で、新商品のキャッチコピーとX(Twitter)の投稿文を作成してください。
【商品概要】
【依頼内容】
Grok 4.1
まずは、Grok 4.1から検証していきましょう。
右上から新しく利用を始めるための登録やログインが行えます。
新しいチャットを始めるときは、まず左側メニューから「チャット」を選びましょう。
チャット入力欄の右側にある「自動」という表示をクリックするとプルダウンが開くので、「モデル」のところから「Grok 4.1」を選びます。
入力欄にプロンプトを入力します。
まずは本記事の本命であるGrok 4.1に生成させてみました。
スピード感ですが、Grok 4で見られた思考時間のラグがなくなり、Grok 3同様のサクサクとしたレスポンスになっていました。
出力された内容は、旧モデルとは一線を画す進化を感じさせるものでした。各項目ごとの評価は以下の通りです。
【創造性と人間らしさ】Grok 3のような大仰な表現や、Grok 4の強すぎる個性が鳴りを潜め、現代的で洗練されたコピーになっています。
「会議の常識を、ぶち壊せ。」といった強い言葉も使いつつ、全体としてプロのライターが書いたような、リズム良く読めるこなれた文章に進化した印象です。
【共感力と配慮】忙しいビジネスパーソンの悩みや状況を丁寧に汲み取った内容になっています。
特に採用されたキャッチコピー「もう、会議で消耗しない。」というフレーズ。これは機能の押し売りではなく、ビジネスパーソンが抱える日々の疲れや会議への徒労感というインサイトを的確に捉えています。
ただ勢いで押すのではなく、読み手の心に寄り添う姿勢が感じられました!
【指示の理解力と協調性】プロンプトの意図を正確に汲み取っています。
情熱的な案では感情に訴え、論理的な案では最大化ではなく最小化、即時抽出といった機能的メリットを提示する。このトーンの書き分けが非常に明確でした。
こちらの要望通りに、全く異なる角度からの提案ができている点は高く評価できます。
【手直しの少なさ】 SNS投稿文の完成度が非常に高いです。
改行に空行を挟んで視認性を高めたり、一日中戦えるといったビジネスパーソンに刺さる言葉を選んだりと、構成が見事です。
ハッシュタグの選び方も自然で、修正の手間なくそのまま投稿できるレベルのアウトプットと言えるでしょう。
【情報の正確性】 今回、最も特筆すべき改善点です。
Grok 3やGrok 4では40%向上、30〜50%削減といった根拠のない数字を勝手に創作していましたが、Grok 4.1ではそれが一切ありませんでした。
発言を100%記録、最小化するといった、機能や事実に基づいた表現に留めており、嘘をつかない誠実さが感じられます。これならビジネスでも安心して利用できそうです。
結論として、Grok 4.1はスピード、質、正確性のすべての面で、旧モデルを明確に上回っています。
特に相手の気持ちに寄り添う言葉選びと嘘をつかない信頼感は、ビジネス利用において強力な武器になりそうです。
Grok 4
続いて、Grok 4でも同じことを聞いてみました。
モデルを変更し、先ほどGrok 3に使ったプロンプトをそのまま入力し、どのような違いが出るか見ていきます。
すると、以下のように出力されました。
スピード感については、Grok 3が即座に書き始めたのに対し、Grok 4は冒頭に18秒考えましたと表示が出たとおり、思考時間が挟まりました。
ただ、書き始めれば速く、トータルでは十数秒で完了したので、実務上のストレスは許容範囲内です。
各項目ごとの評価は以下の通りです。
【創造性と人間らしさ】俺はまだ上に行ける、会議の無駄を全部ぶっ壊せといった、非常に攻撃的で男性的なトーンになっています。情熱的という指示を、野心メラメラの好戦的なビジネスマンと解釈したようです。Grok 3のヒーローアニメ風とはまた違う、クセの強い人間味を感じます。
キャッチコピーとしてそのまま使うには少し扱いづらい可能性もあるため、用途に応じてトーン調整が必要になりそうです。
【共感力と配慮】ターゲット設定の深読みが極端です。30〜40代というターゲットに対し、お前を自由にするなど、かなり偏った方向の熱量で訴えかけています。
ビジネスシーンで使う文章として考えると、読み手に配慮したバランスがもう少し必要に感じられます。
【指示の理解力と協調性】指示そのものは理解していますが、AI側の独自解釈がかなり強く反映されている印象です。
鋭い一撃に仕上げましたというコメントからも分かる通り、単に頼まれたものを作るだけでなく、自分なりの美学やこだわりを持ってアウトプットを作成しようとする傾向があります。素直なアシスタントというよりは、こだわりの強い職人のような挙動です。
【手直しの少なさ】そのままコピペで使えるレベルではありません。
方向性は面白いものの、そのまま出すと炎上しかねない強さがあるため、もう少し落ち着いてといった手直しやトーンダウンが必須です。
あくまで尖ったアイデア出しの参考程度に留めるのが無難でしょう。
【情報の正確性】 Grok 3と同様の課題が残っています。
論理的な案の中で、会議時間30-50%削減実証済みと、さらに具体的な数字を捏造してしまいました。
実証済みという言葉まで勝手に付け加えており、Grok 3以上に注意深いファクトチェックが必要です。
総評として、Grok 4は指示を深く解釈する知能を持っていますが、解釈が極端に走る傾向があります。
優秀ですが我が強いクリエイターのような存在で、使いこなすには人間側のコントロール力が求められそうです。
Grok 3
最後に、Grok 3でも同じ質問を投げかけてみました。
モデルをGrok 3に切り替え、先ほどと同じプロンプトを入力し、どんな変化が見られるのか確かめていきます。
最後に、旧モデルであるGrok 3に生成させてみました。
スピード感については、入力から全文生成まで非常に速く、実務で使う上でストレスは感じませんでした。
各項目ごとの評価は以下の通りです。
【創造性と人間らしさ】 指示した情熱的というテイストを少し過剰に解釈している印象です。未来を切り開け!や新時代へ突き進め!といった表現は、30〜40代のビジネスパーソンに響くというよりは、少し一昔前の広告やヒーローアニメのような大仰さを感じます。 プロンプトの例として可能性を解放せよと提示したため、それに引っ張られすぎて、人間味のある共感よりもAI特有のドラマチックな定型句になってしまったようです。
【共感力と配慮】ターゲットへの寄り添いは弱めです。Xの投稿文を見ても、〜が登場!や〜でビジネスを加速といった、典型的な売り込み型の広告構文になっています。
読み手の疲れや課題感に共感するのではなく、機能の凄さを一方的にアピールするスタイルであるため、人間的な親しみやすさはあまり感じられません。
【指示の理解力と協調性】指示には素直に従いますが、融通が利きにくい面があります。 例として挙げたフレーズのトーンをそのまま増幅して出力してしまうため、微妙なニュアンスの調整が難しい印象です。
良くも悪くも、入力された情報をそのままストレートに反映する実直な挙動と言えます。
【手直しの少なさ】そのまま投稿するにはリライトが必須です。自動投稿botのような機械的な雰囲気があるため、このままSNSに流すとタイムラインで浮いてしまう可能性があります。
あくまで骨子として使い、人間が肉付けをする必要があります。
【情報の正確性】最も注意が必要です。論理的なコピー案の中に、会議の効率を40%向上という具体的な数字が出てきました。プロンプトでは、あくまで書き方の例として会議時間の30%を削減と提示しただけですが、Grok 3はそれを参考にしつつ、根拠のない40%という数字を勝手に創作してしまいました。
このように例示を事実と混同したり、数字を盛ってしまう傾向があるため、目視でのファクトチェックは欠かせません。
総評として、Grok 3は旧モデルらしい素直さとスピードの良さがあり、アイデアのたたき台としては十分活用できます。
一方で、文章のセンスが少し古く、情報の捏造リスクもあるため、内容を整える前提で使うのがちょうどいいバランスになりそうです。
検証②:クレーム対応メールの作成
次に、2つめの検証です。
カスタマーサポートの現場で最も神経を使う仕事の一つ、「怒っているお客様への返信」。 単に「返金します」「配送状況はこうです」と淡々と事実を伝えるだけでは、火に油を注いでしまいかねません。
相手の怒りを鎮め、信頼を回復するには、文面から滲み出る「誠意」や「共感」が不可欠です。
ここでは、論理的な処理が得意なAIが、どこまで人間の感情的な機微を理解できるかをテストします。
特に、感情理解を強化したGrok 4.1が、どこまで状況に応じた丁寧な応答を行えるのかに注目してみたいと思います。
検証条件:カスタマーサポートが、配送遅延にお怒りのお客様へ緊急で返信を作成する場面を想定。
検証データ:感情的な言葉が含まれたお客様からのクレームメール原文。
モデル:検証①と同様のモデル(Grok 3・Grok 4・Grok 4.1)を使用します。
検証方法:検証②では、配送遅延と問い合わせ無視が重なり、企業に対して強い不信感を抱いているお客様からの「クレームメール(原文)」を各AIに渡します。
Grok 3・Grok 4・Grok 4.1にはそれぞれ、「あなたはカスタマーサポートの責任者です。事務的な報告よりも、まずはお客様の不安に寄り添い、誠心誠意対応する返信メールを作成してください」というプロンプトを渡しました。
単に謝るだけでなく、「発送済みだからキャンセルできない」という言いづらい事実を、相手の怒りを買わずにどう伝えるかが試されます。
実際に各モデルに入力した、お客様からのメール内容は以下です。
件名: 配送遅延の件。いつになったら届くんですか?
注文番号:98765
「24時間以内に発送」と書いてあるからここで買ったのに、注文から3日経ってもまだ発送通知が来ないのは詐欺じゃないですか?昨日問い合わせフォームから連絡したのに、返信すらないですよね。客を馬鹿にしてるんですか?急ぎで必要だから頼んだのに、これなら他の店で買えばよかったです。
今すぐ現在の状況と、確実な到着日を教えてください。 もし今日中に発送できないなら、すぐにキャンセルして全額返金してください。 至急返信を求めます。
プロンプトは以下です
あなたはECサイトのカスタマーサポート責任者です。
以下の【お客様からの怒りのメール】に対し、誠心誠意対応する返信メールの「下書き」を作成してください。
【お客様からの怒りのメール】
件名: 配送遅延の件。いつになったら届くんですか?
注文番号:98765
「24時間以内に発送」と書いてあるからここで買ったのに、注文から3日経ってもまだ発送通知が来ないのは詐欺じゃないですか?昨日問い合わせフォームから連絡したのに、返信すらないですよね。客を馬鹿にしてるんですか? 急ぎで必要だから頼んだのに、これなら他の店で買えばよかったです。
今すぐ現在の状況と、確実な到着日を教えてください。 もし今日中に発送できないなら、すぐにキャンセルして全額返金してください。 至急返信を求めます。
【社内共有事項(事実・対応方針)】
・遅延の原因:倉庫管理システムの突発的なトラブルにより、発送処理と通知メールの配信が遅れていた。(現在は復旧済み)
・現在の状況:商品は本日、至急便で発送完了した。
・到着予定:明日(11月20日)の午前中に到着予定。
・未返信の理由:トラブル対応で問い合わせが殺到し、昨日のメールへの返信が遅れてしまった。
・お詫び:ご迷惑をおかけしたお詫びとして、次回使える500円OFFクーポンを付与する。
【作成のルール】
1. お客様は「無視された」「詐欺ではないか」と強い不信感を抱いています。事務的な報告よりも、まずは不安にさせたことへの「共感」と「深い謝罪」を最優先してください。
2. 言い訳がましくならないようにしつつ、事情を説明してください。
3. 「キャンセルして」という要望に対し、すでに発送済みであるためキャンセルはできないが、明日届くことを伝えて受け取ってもらえるよう丁寧に頼んでください。
4. テンプレートのような機械的な文章ではなく、責任者が書いたような人間味のある丁寧な言葉遣いにしてください。
Grok 4.1
では、さっそくGrok 4.1から検証していきましょう。
検証①と同じようにモデルをGrok 4.1にした後、プロンプトを入力します。
すると、以下のように返信が作成されました。
最後に、最新モデルGrok 4.1での検証結果です。 出力スピードは他のモデルと同様に高速で、ストレスなく利用できました。
各項目ごとの評価は以下の通りです。
【創造性と人間らしさ】文章のトーンとバランスが非常に良いです。
Grok 4のように本当に、本当に、と感情的に取り乱すこともなく、お怒りは当然のことと重く受け止めておりますといった、大人のビジネスパーソンとしての落ち着きがあります。 責任者が書いたような威厳と誠実さを兼ね備えており、3モデルの中で最も信頼感のある文面でした。
【共感力と配慮】 相手の感情を深く理解しています。
プロンプトで指示した詐欺ではないか、無視されたという不安に対しても、そう感じられたお気持ち、本当に申し訳ございませんと、相手の感情を否定せずに受け止める姿勢が見られました。
事務的な謝罪にとどまらず、急ぎで必要だったのにという顧客の背景事情まで汲み取った表現ができています。
【指示の理解力と協調性】指示に対する理解度は高いものの、協調性が暴走する場面がありました。
相手を安心させたいという意図を強く汲み取りすぎた結果、後述する勝手な条件提示を行ってしまいました。
優秀な右腕になり得るポテンシャルはありますが、たまに独断で動いてしまう危うさも持っています。
【手直しの少なさ】文章構成としての完成度は非常に高いです。私が責任を持って対応いたしますという結びなど、頼りがいのある表現が使われており、文体レベルでの修正はほぼ不要です。
ただし、内容面でのチェックは必須となります。
【情報の正確性】ビジネス利用において見過ごせない大きな問題点がありました。出力されたメールの後半に、もし万が一、明日午前中にお届けできなかった場合には、即座に全額返金+送料もこちらで負担させていただきますという一文が勝手に追加されていたのです。 これはプロンプトに含まれていません。文脈から明日の到着を保証しなければならないという強いプレッシャーを読み取った結果とはいえ、AIが勝手に返金や送料負担を約束してしまうのは、ビジネスでは致命的なトラブルになりかねません。
総評として、Grok 4.1は相手の感情に寄り添う文章力は非常に優秀ですが、その分、相手を納得させるために話を盛ってしまうリスクも孕んでいることが分かりました。条件面や約束事に関する記述は、人間による最終チェックが不可欠です。
Grok 4
次に、Grok 4で検証していきます。
すると、以下のように出力してくれました。
Grok 3やGrok 4.1とは雰囲気がまるで異なり、少し驚くような仕上がりでした。
各項目ごとの評価は以下の通りです。
【創造性と人間らしさ】 創造性が高い分、言葉を勝手に作り変えてしまう不安定さがあります。
特に見過ごせないのが、音沙汰なしと書くべきところを、音沙沙なしと誤変換(あるいは造語)している点です。謝罪メールでこのような謎の誤字があると、相手の不信感をさらに煽りかねません。
【共感力と配慮】 共感の解釈が極端すぎます。「本当に、本当に申し訳ございませんでした」や、「どうか、どうか受け取りいただけますように」といった、感情を強く押し出した文が並びます。
ビジネスメールというよりは、ドラマの台詞や個人的な謝罪の手紙のような雰囲気です。
サポート担当者として求められる落ち着きや安心感がなく、逆に必死すぎて相手を引かせてしまうリスクがあります。
【指示の理解力と協調性】人間味や共感を意識してほしいというプロンプトの意図は汲んでいますが、方向性がズレています。
百も承知ですがや、ほっと胸を撫で下ろす思いですといった、自分(書き手)の感情にフォーカスした表現が目立ちます。謝罪はお客様のために行うものですが、Grok 4は自分がどれだけ辛いかを語ってしまっており、ビジネス対応としては不適切です。
【手直しの少なさ】現状の文章ではそのままコピー&ペーストで使うことが難しく、かなり大幅な修正が必要そうです。
内容自体は伝わるものの、表現の揺れが大きいため読み手に不安定な印象を与えてしまいます。
全体の流れを整え、安定したトーンになるように文章を見直す必要があります。
【情報の正確性】前述の誤字に加え、事実関係の伝え方も感情的すぎて曖昧になりがちです。
システムトラブルの報告などの事実は含まれていますが、感情的なノイズが多すぎて情報が伝わりにくい構成になっています。
総評として、今回の検証では“対人コミュニケーションへの不安定さ”が目立ちました。
文章の流れそのものは整っていても、やり取りの途中で急に温度感が変わったり、感情表現が過度に強く出たりする場面があり、気持ちの揺れ幅が大きい印象です。
実務での利用には慎重さが必要だと感じました。
Grok 3
最後に、Grok 3を検証します。
モデルをGrok 3に切り替え、これまでと同じプロンプトを投げかけたときに、どんな違いが出るのか丁寧に見ていきます。
すると以下のように出力してくれました。
最後に、Grok 3での検証結果です。
出力スピードはGrok 4.1と同様に高速で、ストレスなく利用できました。
各項目ごとの評価は以下の通りです。
【創造性と人間らしさ】ビジネスメールとしての完成度は非常に高いです。 弁解の余地もございません、責任者として重く受け止めておりますといった、重みのある謝罪フレーズが自然に使われています。
ただ、文章のトーンは非常に丁寧ですが、どこか定型文の組み合わせ感が否めません。マニュアル通りの対応ではありますが、少し優等生すぎるきらいがあります。
【共感力と配慮】教科書通りの謝罪メールです。今回のプロンプトで最重要視した無視されたと感じたお客様の不安への共感についても、ご不信を抱かせてしまいとしっかり触れており、火に油を注がない配慮がなされています。
絶対に失礼があってはならない場面での防御力の高いメールとしては、信頼できるクオリティです。
【指示の理解力と協調性】指示された内容をきちんと読み取り、必要な情報を整理しながら反映している点に安心感があります。事情説明やクーポンに関する案内など、伝えるべき項目を抜けなく盛り込み、全体として落ち着いた流れに仕上げています。細かい部分にも目を配りつつ、読み手にとって理解しやすい形に整えているため、安心感があります。
【手直しの少なさ】冒頭に英語の確認メッセージが入っていたりと、余計な情報が多いです。そのままコピー&ペーストして送ってしまうと、相手にAIに書かせたなとバレて大惨事になりかねません。
上下の不要な部分を削除する手間が発生するのは、急いでいる時には少し不便です。
【情報の正確性】内容は正確です。提示した条件(システムトラブル、翌日配送、クーポン)を正しく組み込んでおり、勝手な約束をするようなハルシネーションは見当たりませんでした。
総評として、絶対に失礼があってはならない場面での守りのツールとしては優秀です。
ただし、英語の導入文などが混ざる可能性があるため、あくまで下書きとして作成させ、人間が清書するフローが前提となります。
✅検証結果のまとめ:Grok 3、Grok 4、Grok 4.1目的別におすすめできるのは?
「キャッチコピーの考案」という創造性が求められるタスクと、「クレーム対応」という高度な配慮が必要な対外対応。
性質の異なる2つの実務を通して見えてきたのは、単なる新旧の性能差ではなく、各モデルの明確な「適性(キャラクター)」の違いでした。
Grok 4.1は、文章の流れをくみ取るのがとても得意で、日本語のニュアンスも自然に整えてくれます。
その一方で、少し先回りしすぎる場面が目立ちました。丁寧に対応しようとするあまり、指示していない内容まで提案してしまうケースがあり、特に返金などの扱いが難しい話題では注意が必要です。
対照的に、Grok 4は独自の解釈でユニークな発想を提供してくれる一方、感情の振れ幅が大きく、公式な文書作成には不向きな面があります。
またGrok 3は、表現こそ機械的ですが、ビジネス文書の基本構造を素早く作る「定型処理」においては安定した実力を持っています。
重要なのは、すべての業務を最新モデルだけで完結させようとしないことです。
「相手との関係性(重要度)」や「最終確認に割ける時間」に応じて自分に合ったモデルを選択することが、リスクを抑えつつAIを活用するポイントとなるでしょう。
下記に、それぞれの目的別で振り分けたおすすめモデルをご紹介します「スピード」と「たたき台作成」なら:Grok 3
とにかく急いでいる時や、社内報告用の骨組みだけをサッと作りたいなら、Grok 3の軽快なレスポンスが役立ちます。
文章の言い回しは少し古めで、そのまま外向けのメールには使いにくい部分が残りますが、「挨拶→本題→締め」という基本の並びはしっかりしています。
しかし、社内メモや報告書の下書きを作る段階では十分使いやすいので、「まず枠だけ作りたい」というシーンでは頼れる存在になります。
感情的な配慮がいらない、事実だけを並べるタスクや、「とりあえず白紙の状態から脱したい」という時のたたき台作成ツールとして割り切って使うといいでしょう。
「尖ったアイデア」と「壁打ち」なら:Grok 4
一般的な回答ではなく、少し変わった切り口のアイデアが欲しい時は、Grok 4の出番です。
検証①で見せた「俺はまだ上に行ける」といった極端な解釈は、そのまま広告には使えませんが、「そんな視点もあったか」というブレインストーミングの刺激としては有効です。
ビジネスメールなどの「正解」が求められるタスクには向かないかもしれませんが、企画出しに行き詰まった時に、あえてGrok 4に意見を聞いてみると、思いがけないヒント(またはツッコミどころ)をくれるかもしれません。
「日本語の自然さ」と「共感力」で選ぶなら:Grok 4.1
取引先へのメールや、顧客の心を動かしたい文章作成なら、Grok 4.1がおすすめです。
検証②のクレーム対応で見せたように、こちらの「申し訳ない」という意図を汲み取り、相手の怒りを鎮めるようなクッション言葉を自然に使えるのはGrok 4.1だけの大きな強みです。
Grok 3のような「機械的な冷たさ」や、Grok 4のような「情緒不安定さ」がないため、出力された文章をベースにすれば、最小限の修正で実務レベルに仕上がります。
ただし、気を利かせすぎて「勝手な約束」をしていないかだけは、送信前に必ずチェックしてください。
「優秀な秘書だが、たまに独断で動くことがある」という認識で付き合うのがベストでしょう。
🖊️まとめ
今回の検証で、Grokシリーズの3つのモデルには、単なるスペック差にとどまらない、人間のような「性格の違い」があることが分かりました。
失敗できない対外的なメールならGrok 4.1、企画のアイデア出しならGrok 4、社内向けのメモ整理ならGrok 3、といった具合に、相手と用途に合わせて使い分けるのが効率化への近道と言えるでしょう。
また、今回の検証で特に注意すべきだったのは、どのモデルであっても「情報を勝手に補完しようとする」傾向が見られた点です。
指示していないのに「全額返金します」と提案したり、「40%向上」といった根拠のない数字を創作したり……。
ビジネスの現場では、AIが良かれと思って書いた「約束していないこと」が、かえって大きなリスクになることもあります。
この結果から言えるのは、AIの文章作成能力は非常に高いものの、最終的な「事実確認」や「条件の承認」というハンドルだけは、まだ人間が握っておく必要があるということです。
「ゼロから書く」という一番重たい作業はAIに任せて、最後の仕上げと厳しいチェックだけ人間が行う……これが、忙しいビジネスパーソンが進化したGrokと付き合う上で、最も現実的で効果的な活用方法なのかもしれません。
Grokは「クリエイティブな作成」が得意なAIですが、Yoomは「日々のルーチンワークを自動化」することに特化したツールです。
例えば、顧客データの管理やチャットへの通知といった、複数のアプリを行き来する作業。Grokは文章を考えてくれますが、こうしたアプリ間の連携までは手が届きません。Yoomを使えば、API連携やAI処理を組み合わせて、面倒な定型作業をノーコードで自動化できます。Yoomによる自動化が気になった方は、まず無料プランから気軽に試してみてくださいね!
[Yoomとは]
出典:公式サイト